チーム医療で治療法協議 心臓弁膜症の診断と治療

チーム医療で治療法協議 心臓弁膜症の診断と治療

2024年03月20日 公開

 皆さんは「心臓弁膜症」という心臓疾患をご存じでしょうか? 世界的な医学雑誌である「Lancet(ランセット)」に2006年に掲載された調査によると、55~64歳の1・9%、65~74歳の8・5%、75歳以上の13・2%にこの疾患を有する方がいらっしゃると報告されました。年齢を重ねるごとにこの疾患の有病率は上がりますが、すべての方が治療を要する状況であるというわけではありません。

 ただし、この心臓弁膜症が重症と診断された場合、多くの方は治療を要する状況となります。理由としては、放置した場合、心不全の発症や突然死など、ご自身の寿命を縮める転帰をたどる可能性があるからです。

 一般的な症状としては「息切れや動悸(どうき)」がありますが「心臓の雑音」で判明することもあります。確定診断には心臓超音波検査(心臓エコー検査)が必要です。専門医による診察・検査を経て確定診断および治療適応・時期・内容の決定が行われます。

 治療法としては内科的治療および外科的治療があります。内科的治療はカテーテル治療となります。心臓弁膜症は心臓内に存在する弁の劣化など、物理的な変化による疾患ですので根治には原則、弁自体への直接的な治療介入を要します。

 カテーテル治療は、「重症大動脈弁狭窄症(きょうさくしょう)に対する人工弁設置術:TAVIタビ」や「重症僧帽弁閉鎖不全症に対するクリップ治療」が行われております。 外科的治療は開胸法によりすべての心臓弁への治療介入が可能であり、「人工弁置換術」もしくは自己弁を温存する「形成術」があります。最近では、外科的治療における手術切開長を小さくし、骨を離断しないで早期社会復帰を目指す「MICS手術:ミックス」が多くの施設で行われるようになってきました。

 治療に関して重要なことは、内科と外科が合同で「ハートチームカンファ」を行い、両者の考えを述べ治療法を決定することです。これは国内のガイドラインでも推奨されております。今回の掲載を含め、「心臓弁膜症」の情報はインターネットを含めた各種メディアにあふれています。ぜひ、心当たりのある方は検索、そして専門医を受診し、ご理解の上、ご自身の心臓と向き合ってください。

山内昭彦 友愛医療センター 心臓血管外科 (豊見城市字与根)

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