慢性疼痛症治療の最前線 心の問題への寄り添い必須

慢性疼痛症治療の最前線 心の問題への寄り添い必須

2023年12月20日 公開

 皆さんは「線維筋痛症(せんいきんつうしょう)」という病気をご存じでしょうか。全身的な慢性疼痛(とうつう)の一種で、疼痛は鈍い痛みから激しい痛みまで個人差があり、「体がナイフで切り裂かれるような痛み」「体の中を割れたガラスの破片で傷つけられるような痛み」など、特異的な言葉で尋常ではない痛みを表現します。

 診療ガイドラインでは「広範囲にわたる疼痛の病歴があること」「18カ所の圧痛点のうち、11カ所以上の圧痛点があり、3カ月以上継続していること」と定義され、さらにはリウマチ性類縁内科疾患、整形外科疾患、精神科疾患を全て除外して残った疾患が本症です。

 本症の原因はいまだに不明ですが、さまざまな説が議論されています。その一つとして「脳が痛みの信号を感じる機能に障害が起こっているのではないか」というものがあります。脳には痛みの信号を伝える「アクセルの機能」と、信号を抑える「ブレーキの機能」があります。何らかの原因でこれらの機能に障害が生じ、ブレーキが利かなかったりアクセルを踏みすぎたりすると、通常では痛みを感じない程度の弱い刺激でも痛みを感じるようになるのです。

 往々にして他疾患を合併することがあります。リウマチ、うつ病、変形性関節症などで症状、病態は複雑となり、その境界線が判然としないケースもあります。治療も困難を極め、併診で対応することもあります。一方で、痛みのあまり人生への絶望感で自殺願望を抱き、医師に対する不信感や怒りを抱きやすくなります。そのため薬物療法だけでは不十分で、患者さんの心の問題も見逃さずに寄り添うことが欠かせません。

 ガイドラインによると、治療薬の第一選択は従来より広く処方されている抗うつ剤であるプレガバリンで、漸増療法が推奨されております。これは痛みのブレーキを増強するものとして収載されました。非麻薬性の強力な鎮痛剤を使用することもあります。神経節ブロックや鍼灸もあります。

大浦孝 おおうらクリニック(腎臓内科 リウマチ科)

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