上手な精神科のかかり方 ガイド活用し、効果的治療へ

上手な精神科のかかり方 ガイド活用し、効果的治療へ

2023年11月22日 公開

 嫌なことがあり一時的に落ち込むことや、身近な人が亡くなって悲しくなることは、皆さんも経験があるかもしれませんね。これらは正常な心の反応です。しかし、一日中気分が晴れず、仕事や趣味に全く身が入らない状態が何週間も続いているようなら、うつ状態になっている可能性があり、精神科での治療を受ける必要があるかもしれません。なお、うつ状態ではうつ病以外の疾患も考えられますが、今回は割愛します。

 もし自分や家族、知人がうつ病と診断されたら、「医者任せにしない」ということが実はとても重要です。日本では「わからないので先生にお任せします」という考え方が一般的ですが、治療方針の決定は歴史的に変遷しており、現在では当事者と医療者が共に話し合って決める「共同意思決定」という考え方が主流になりつつあります。

 そのためには、当事者や周囲の人々も疾患について学ぶ必要があります。皆さんは、自分のうつ病の重症度や服用されている薬の効果や副作用についてご存じでしょうか?

 精神科医はうつ病ガイドラインを利用しながら治療方針を提案しますが、実は日本うつ病学会から「当事者・家族のためのわかりやすいうつ病治療ガイド」という本が出版されています。この本は、医療者向けのガイドラインに記載されている内容を当事者や家族にわかりやすく解説しています。ガイドラインは当事者と治療者が共に進む上での道しるべであり、絶対にガイドライン通りに行わなければならないというものではありません。

 日本の精神科医療は1回当たり5~10分しか診療時間が取れないのが現状です。しかし、信頼できる書籍をうまく活用して自ら学ぶことで、短時間の診療でもより効果的な治療が可能になると思います。

 私たちは皆さまが納得する治療を受けられ、多くの方々が回復に至ることを心から願っています。

座間味優 琉球大学精神病態医学講座、精神科神経科

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