子の生まれつきの病気 早期発見へ新生児検査を

子の生まれつきの病気 早期発見へ新生児検査を

2023年09月27日 公開

 子どもの病気というと、ほとんどの方は発熱や咳などの感染症を思い浮かべることと思います。以前は子どもが細菌による髄膜炎で重い障害を残したり、ウイルス「はしか」により脳炎で寝たきりとなったりすることがありましたが、定期的なワクチン接種によりその数は激減し、われわれは予防対策に多くの恩恵を受けることができるようになりました。

 子どもの生まれつきの病気は感染症と異なり、生まれた時は症状がなく、発達がゆっくりであることから後々に病院に相談し診断されることがあります。そのうち難病といわれる病気はよく効く治療がなく、また診断することが難しく、長い年月にわたって症状が悪くなっていきます。長年の地道な基礎研究や臨床研究の積み重ねにより、近年は効果のある治療法が見つかり、完治はしないものの、適切な治療や自己管理を続けると普通に生活ができる病気が増えてきています。

 神経・筋の病気の例として脊髄性筋萎縮症があります。重症の場合は一生寝たきりとなり、人工呼吸器管理となります。原因となる遺伝子の働きを調節する治療により、できるだけ早く治療を行うと自力で運動できるようになります。

 最近ではこのような早期治療が必要な病気を見つけるために、全国の各自治体や病院が、新生児検査としてオプショナルスクリーニングに取り組み始めております。2021年6月には、この新生児検査により脊髄性筋萎縮症と診断された事例が熊本県より発表されました。病気の症状が出る前に治療されたので寝たきりになることなく、歩行可能となるであろうと報告されています。

 沖縄県では沖縄県医師会と沖縄県産婦人科医会を含む五つの学会の協力により、本スクリーニングを今年7月より開始しました。いくつもの課題がありますが、このような難しい病気の仕組みが解明され、治療法が見つかり、その対策に取り組んでいく社会の実現が近づいていることに感謝しつつ、皆さま方に知っていただけるとありがたいです。

知念安紹、琉球大学病院 小児科 診療教授

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