痙縮とボツリヌス治療 余計な力入ることを抑制

痙縮とボツリヌス治療 余計な力入ることを抑制

2023年09月13日 公開

 脳卒中の症状の一つに、「痙縮(けいしゅく)」があります。痙縮とは、動作をしようとしたときに、麻痺(まひ)のある手足に余計な力が無意識に入り過ぎてその力を緩めることができず、一定の方向に手足が固まったようになる症状です。痙縮症状が出ると、着替えや歩行など生活の動作がさらにしづらくなります。

 動作をしないと元に戻りますが、症状をそのままにしておくと痙縮が進行するほか、動作のしづらさが繰り返されるうちに関節の硬さとなって一定の方向に固まってしまい、関節そのものが動かせなくなる拘縮(こうしゅく)という状態になってしまうこともあります。痙縮や拘縮が進まないように、脳卒中で入院したときからリハビリテーションではストレッチや余計な力が入らないような動作の要領の習得を進めていきます。

 関節の動きや角度を適度に制限して調整する装具を使った療法も併用したり、筋肉に過剰な力が入るのを抑える薬の内服治療などが行われたりすることもあります。

 退院後の生活期は、気がつかないうちに痙縮が進行していることがあるので注意が必要です。痙縮症状が強い場合に、ボツリヌス治療があります。ボツリヌス治療とは、運動神経の働きを抑える作用があるボツリヌス毒素を筋肉内に注射し、余計な力が入ることを抑えて痙縮症状を和らげる治療です。資格を持った医師が施行できます。毒素をつくるボツリヌス菌は食中毒の原因菌で知られていますが、菌そのものを注射するわけではないので、感染の危険性はなく、効果は3~4カ月で消えますので、適度な量を調整できる治療です。

 ボツリヌス治療はリハビリテーションとセットで生活動作を向上させていく治療です。脳卒中後の生活期では、介護保険を利用している方も多いですから、ケアマネジャーと相談して、まず訪問リハビリテーションを開始し、自己流動作になっていたら理学療法士や作業療法士と修正し、ストレッチ、必要な場合は装具の再評価と再調整をしながら、ボツリヌス治療について医師に相談されるとよいと思います。

渡名喜良明、大浜第一病院 リハビリテーション科

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