シラミは昔の病気ではない

シラミは昔の病気ではない

2023年03月08日 公開

有効な新駆虫薬が登場

 アタマジラミと聞くと、どういう印象をお持ちでしょうか。大流行していた大戦直後に殺虫剤の白い粉を頭に吹きつけられた方、子どもがかかったことがある方、全く知らないという方、過去の病気だと思っている方、世代によってさまざまだと思います。実はこのアタマジラミ、沖縄では特殊な事情があります。

 アタマジラミの成虫は2~3ミリほどの大きさで髪の毛に寄生し、吸血します。虫刺されと同じ痒みがあります。その寿命は1カ月ほどで、その間、メス1匹が100個の卵を髪の毛に産みつけます。髪の毛同士が触れれば簡単にうつるので、誰でももらってしまう可能性があります。

 治療は、市販されている駆虫薬(スミスリンシャンプー、シラミ取りシャンプーなど)を購入し、自宅で処理をします。この薬はフェノトリンという、蚊取り線香や一般的な殺虫剤の成分です。卵には効かないので、ふ化したところを狙って、2日おきに3回ほど頭全体に使います。

 薬以外の方法には、寄生できないよう髪の毛を短く切る、シラミ専用のすきぐしで卵を取る、などがありますが、すきぐしは根気のいる難儀な作業なので、それだけで治すのは結構難しいです。

 沖縄では駆虫薬が効かないフェノトリン耐性シラミが蔓延(まんえん)しています。2010年の全国調査で、フェノトリン耐性シラミの割合は沖縄以外では数%程度ですが、沖縄だけ96%と突出していました。沖縄のアタマジラミはほとんどこれまでの駆虫薬が効かなくなってしまっているのですが、理由はわかっていません。

 およそ10年間、沖縄ではアタマジラミに有効な治療薬がない状態でしたが、21年に耐性シラミにも有効なジメチコン(シリコンの一種)の駆虫薬が発売され、皮膚科医としては一安心しています。

 アタマジラミは決して過去の病気ではなく、今でも子供や親たちを悩ませています。早期発見と速やかな治療が重要です。ぜひ、お子さんを愛でつつ、卵がないかをチェックしてみてください。

山口さやか、琉球大学病院 皮膚科

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