フレイル

フレイル

2023年01月18日 公開

食事と運動で予防を

 老化は加齢とともに生じる現象ですが、ご高齢でも活動的な方や、活気を失い生活に介助を要する方などさまざまで、年齢だけでは「老い」を判断できません。

 加齢に伴う体力や気力が低下した状態は「フレイル」と呼ばれ、老化の進行した状態です。われわれの推計では、沖縄県の65歳以上の高齢者の17%がフレイルと推定されます。

 メタボリック症候群は、体内に過度に栄養が蓄積された状態で、主に動脈硬化疾患の発症が問題となりますが、フレイルは蓄積された栄養が減少(異化の亢進(こうしん))することによりさまざまな障害を呈します。

 フレイルは筋肉量が減少することにより、筋力・歩行速度・活動量の低下、易疲労感、体重減少など、身体機能や治る力(恒常性)が低下します。フレイルは慢性疾患を数多く有する一方で、血圧・脂質・体重レベルが低下し、転倒骨折・入院・施設入所・死亡のリスクが2~6倍高くなります。

 医学会では、高血圧・心房細動・心不全等の治療に際し、フレイルの患者さんにも標準的な治療を行うべきかについて議論されています。

 フレイルはしかるべき対処により、予防や回復が可能です。フレイル予防で最も大切なことは、食事(栄養)と運動です。肉や魚、豆腐、卵など、タンパク質を十分に摂取し、野菜や果物でビタミンとミネラルを取ることが大切です。筋肉の材料である栄養の供給に加えて、運動することで筋肉は作られます。コロナ禍で「やーぐまい」するようになったことをよく聞きますが、感染対策を行い、運動を継続するのが望ましいと思われます。

 また社会活動や人との関わりを持つことも大切です。私自身あこがれている、仕事を現役引退した後の悠々自適な生活は、フレイルを加速させるかもしれません。

 医学は病気の発症や生命予後の改善を目指して進歩してきましたが、現代は「健康寿命」へ関心が移行しており「質」を問われる時代になりました。「歳のせい」とされていた加齢に伴う体力低下は、回復できる可能性があります。フレイル対策は究極のアンチエイジングと言えます。

井上卓、おもろまちメディカルセンター 環器内科

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