血管が異常に発達する「静脈奇形」

血管が異常に発達する「静脈奇形」

2023年11月22日公開

体のどこにでもできる可能性 入院期間短くする療法は?

 世の中にはいろいろな病気がありますが、「静脈奇形」という病気をご存じでしょうか。静脈奇形は血管奇形の一種です。

 人間の体には大きく分けて動脈、静脈、毛細血管という3種類の「血管」が存在します。動脈は心臓から出た血液を全身の臓器や筋肉などの組織に運ぶ血管で、静脈は臓器や組織でエネルギーとして使われた血液を心臓へ戻す血管です。そして動脈と静脈をつなぐ網目状の細かい血管が毛細血管になります。

 これら血管が体のどこかで異常に発達した状態を血管奇形といいます。血管奇形の中で静脈が異常発達してできたものが静脈奇形です。血管奇形で最も多いと言われています。

 静脈奇形は体のどこにでもできる可能性があります。皮下組織や筋肉の内部に生じたものは、以前は「血管腫」と呼ばれることが多かったのですが、腫瘍ではなくあくまでも奇形なので、最近では静脈奇形と呼ぶことが一般的になりつつあります。

 静脈奇形は悪性の病気ではありませんので、無症状であれば治療の必要性はありません。しかし、病気の増大に伴って痛みが生じることがあります。また、腫れて見えることからお顔などにできた場合は見た目の問題も生じ、そうした場合は治療が勧められます。

 治療については外科手術で切除するほか、病気に直接針を刺して内部に薬剤を注入する「硬化療法」と呼ばれる治療があります。放射線科や形成外科が携わっていることが多いです。硬化療法は手術と比較すると体に与える影響が少なく、入院期間を短くすることができます。

 磁気共鳴画像装置(MRI)など画像診断が進歩したこともあり、静脈奇形がよく見つかるようになっています。それに伴って硬化療法も以前に比べて普及してきており、昔なら「良い治療法がないから様子を見ましょう」と言われていた方も効果が期待できます。

 思い当たる方はぜひご相談されてみてはいかがでしょうか。

安座間喜明・琉球大学病院放射線科(西原町)

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