アルコールによる肝障害

アルコールによる肝障害

2023年04月27日公開

お酒に強い沖縄県民ほど要注意 「健康に留意して」

 お酒(アルコール)は肝臓で水と二酸化炭素に分解されます。その分解に大きな役割を果たしているのが、アルコール脱水素酵素、アセトアルデヒド脱水素酵素と呼ばれる酵素です。これらの酵素の多寡で、体内に入ったアルコールの分解速度や分解能力がほぼ決まります。

 酵素をどれだけつくれるかは、遺伝子の変異で決まっています。ヒトは通常は対で遺伝子を持っているのですが、遺伝子に変異が起こると、片方もしくは両方でこれらの分解酵素の遺伝子を持たない状態(欠損)が起こります。この変異は、われわれの祖先がまだユーラシア大陸にいた頃に起こったとされ、欧米人にはほとんど見られない、日本人特有の変異です。

 この遺伝子が対で欠損している人は、アルコールの分解が非常に遅いです。お酒を一口飲んだだけでも真っ赤になる、気分が悪くなるタイプです。下戸と呼ばれ、日本人の50%はこのタイプといわれています。一方、遺伝子を対の両方で持っている人は、酵素をたくさんつくり、アルコールをどんどん分解できる人です。日本人には非常にまれとされています。

 残る50%の日本人は遺伝子を1カ所だけ持っているタイプです。ある程度の酵素をつくれますので、ある程度飲める人です。ただし、アルコールの分解速度がそれほど速いわけではないので、たくさん飲めばそれだけアルコールが体内に残り、肝障害などの原因となります。

 この遺伝子の変異の頻度が、沖縄と本土では違うことが分かっています。本土では50%といわれる酵素を対で欠損するタイプの割合が、沖縄では20~30%程度と少ないのです。つまり、沖縄は本土に比べ、飲めない人が少ないのです。

 アルコールによる肝障害は、お酒に弱い人が起こすのではなく、ある程度飲める人が度を超して飲酒することによって起こります。お酒を楽しめることに感謝しつつも、アルコールの分解速度は決して速くないことを自覚して、健康に留意して飲むことが、沖縄ではより一層求められているといえましょう。

菊地馨 県立八重山病院内科(石垣市)

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