「ついでにイケメンに…」冗談に潜む矛盾

「ついでにイケメンに…」冗談に潜む矛盾

2026年02月26日公開

形成外科医が向き合うルッキズム

 形成外科という診療科は先天性疾患や外傷、悪性腫瘍などさまざまな要因に伴う表層の異常(見た目または機能の問題)に対して、種々の技術を用いて改善することを目的として診療をしています。

 昨今、ルッキズムという言葉を聞くことが増えました。ルッキズムとは一般的に「外見に基づく偏見や差別」と定義され、今や本来の語意から派生して、誰もが日常生活の中で感じる見た目に関わる違和感や理不尽さについても表す語になりつつあります。ルッキズムという語の広まりはすなわち、「見た目による差別をやめよう」という社会からのメッセージであり、見た目の価値は現在転換点にあるのだと思います。

 その一方で美容外科クリニックが乱立し、「直美」(初期臨床研修後、すぐに美容医療に進む)という言葉が社会問題化するように、美容医療の需要が社会全体で高まっているのも事実です。建前としてはルッキズムに反対しつつも、個人の本音としては少しでも美しくなりたい-これが現代社会の考え方の中央値なのではないでしょうか。

 形成外科学はまさしくルッキズムに立脚した学問であり、病気やケガに伴う“醜形”を良くするために数々の技術、理論を打ち出してきました。ルッキズムを減らすための学問でありながら、その価値判断には常にルッキズムがあるという矛盾をはらんでいる訳です。例えば、顔の骨を折ってしまったお子さんの手術をする際に、患児のお母様から「ついでにイケメンにしてください」と言われることがあります。冗談として受け流しますが、これも考えたらルッキズムに加担しかねません。特にお子さんに関しては、見た目を評価する行為自体、とても慎重に行わなければなりません。

 見た目を良くすることが悪だと言いませんが、必ずしも善でないこともあります。少なくとも今現在起きているルッキズムについては形成外科医にも責任の一端があるように思います。変わりゆく世の価値観に、われわれはどう寄り添うか。今後の課題として考えていきたいところです。

永塚大樹 琉球大学病院形成外科(宜野湾市)

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