生きていく上で必要不可欠な「沈黙の臓器」

生きていく上で必要不可欠な「沈黙の臓器」

2023年03月09日公開

健康を取り戻せる「肝移植」

 肝臓は心臓や肺と同じく、人が生きていく上で必要不可欠な臓器です。肝硬変などで働かなくなると「肝不全」と呼ばれる状態になり、黄疸(おうだん)(皮膚が黄色くなる)や腹水(おなかに水が大量にたまる)といった症状が出て、最終的には命を落とすことになります。

 肝臓病の原因はB型・C型肝炎ウイルスやお酒などですが、俗に「沈黙の臓器」と呼ばれており、よほど病気が進行しない限り全く症状が出ず、気付いた時には肝不全ということもよくあります。内科の先生が頑張って治療してもなかなか治らないことがあり、そうなると「肝移植」の出番となります。

 肝移植は、手術で病気の肝臓を全部取り出して正常な肝臓と入れ替える治療です。つまり、誰かから肝臓をいただく必要があり、「脳死肝移植」と「生体肝移植」の2種類があります。

 脳死肝移植は、交通事故や脳卒中などで脳がダメージを受け、心臓や呼吸の動きも止まってしまう「脳死」の状態となった方から肝臓をいただきます。心臓や肺、腎臓、膵臓(すいぞう)、小腸などの臓器も提供していただくことができます。

 一方、生体肝移植は文字通り生きた方から肝臓を部分的にいただく手術で、夫婦間を含めた親族の方のうち「自分の肝臓で患者さんを助けたい」という意思がはっきりしている方に協力していただく手術です。病気ではない健康な方に手術することになるため、十分に検査して安全にできることを確認する必要があります。

 脳死肝移植を行う施設は認定制で全国に25施設ありますが、残念ながら沖縄にはありません。生体肝移植は沖縄でも取り組まれており、県内で手術を希望される場合はこちらの手術を受けることになります。

 肝移植と聞くと特別な治療と思われるかもしれませんが、保険が適用されている一般的な治療の一つです。命が助かるだけでなく、健常な方と同じくらい元気になる治療ですので、肝臓が悪いと言われている方や、治療に困っている医師の方々はぜひご相談ください。

高槻光寿 琉球大学病院第一外科(西原町)

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