10年生存率がわずか6.5%の膵臓がん 

10年生存率がわずか6.5%の膵臓がん 

2022年11月28日公開

「沈黙の臓器」の異常を早く察知できる検査とは

膵(すい)がんは最も予後不良ながんとして知られています。2021年に国立がん研究センターが発表したデータによると、10年生存率は胃がん、大腸がんが60%を超えているのに対し、膵がんは6・5%にとどまります。

膵臓(すいぞう)は上腹部の背中側で胃の後ろ側にあり、ほかの臓器に隠れていることが早期診断を難しくしています。「沈黙の臓器」ともいわれ、がんが進行するまで症状が出にくく、症状出現時の診断では手術ができない状態であることが多いです。

10ミリ以下という非常に小さい膵がんで治療できた場合は、予後が非常にいいことが分かっています。膵がんの予後向上のためには、“10ミリ以下”の早期に診断する必要があります。

では、どうすればいいでしょうか? 膵がんは胃がんや大腸がんのようにがん検診があるわけではありませんが、健診等で行われることの多い腹部超音波検査で、膵臓は観察臓器の一つとなっています。その検査で、「膵嚢胞(のうほう)」「膵管拡張」が指摘されることがあります。

膵嚢胞は、内部に液体がたまっている袋状のものです。膵管拡張は、膵液の流れる管が拡張している状態です。膵がんの腫瘤(しゅりゅう)を見ているわけではありませんが、そういった所見は早期の膵がんの変化を見ている可能性があります。

精密検査とその後の定期的な経過観察で膵がんの早期診断につながり、予後の改善が期待できます。精密検査にはMRIやCT、超音波内視鏡検査などがあります。超音波内視鏡検査とは、内視鏡スコープの先端に超音波プローブを装着して行う検査で、膵臓を取り囲んでいる胃や十二指腸内から膵臓を観察することができるため、数ミリの小さな病変でも検出でき、膵がんの早期診断に非常に有用です。

膵がんの危険因子としては、糖尿病や喫煙、大量飲酒、肥満、膵がんの家族歴などが知られています。こうした危険因子を有する方は、まずは腹部超音波検査を積極的に受けてほしいです。膵嚢胞や膵管拡張を認めたら、専門施設を受診することが膵がんの早期診断につながります。

森英輝・中頭病院消化器内科(沖縄市)

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