無痛分娩の麻酔 ストレス減や体力温存期待

無痛分娩の麻酔 ストレス減や体力温存期待

2025年06月25日 公開

 無痛分娩(ぶんべん)とは、陣痛やお産の痛みを和らげるために麻酔を行うことを言います。現在主流となっている麻酔法は硬膜外麻酔(硬膜外無痛分娩)です。これは脊髄神経を保護している膜(硬膜)の近くに直径1ミリほどの細い管(カテーテル)を置いておき、局所麻酔薬などの鎮痛薬を神経の近くで流すことでおなかから下の感覚を鈍くする方法です。痛みはかなり軽減されますがゼロでないことが多いです。その理由は麻酔を効かせ過ぎると力が入りにくくなり、いきめないとお産の進行の妨げになってしまうからです。麻酔薬の濃度や投与方法に各施設で工夫がなされています。

 無痛分娩のメリットは痛みが軽減されることによりお母さんのストレスが減る、体力が温存できるという点が挙げられます。特に痛みへの不安が強い方や持病があって体に負担をかけられない方に良い選択肢となります。

 一方で硬膜外無痛分娩はまれに合併症を起こすことがあります。特に急を要する合併症として高位脊麻(何らかの原因で麻酔薬が硬膜の内側に入り、脊髄に直接作用すると起こり得ます)による呼吸停止、局所麻酔薬中毒(投与した麻酔薬の血液内の濃度が高くなり過ぎると起こります)によるけいれんなどがあります。わたしたち医療従事者側の課題ですが、これら合併症への対応という点でマンパワー不足のために希望するすべての妊婦さんに無痛分娩を行えていない、という施設がまだ多いです。

 とはいえ無痛分娩でお産をされる方は全国平均で10%を超えており増加傾向にあります。東京都が今年公表したアンケートでは無痛分娩でお産をした方は35%にも上っています。都内で無痛分娩を希望していた妊産婦さんが6割を超えていることも分かっています。県内でも「産みたいけれど、あの痛みがまた来るのかと思うと恐怖しかない」というような方は結構おられるのではないでしょうか。医療従事者もできる限りの対応はしていきたいと思っています。ぜひお近くの無痛分娩が可能な施設にご相談ください。

呉屋太章 沖縄赤十字病院 麻酔科(那覇市)

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