肝移植医療 保険適用の一般的治療

肝移植医療 保険適用の一般的治療

2025年09月24日 公開

 「臓器移植」という手術をご存じでしょうか。人の命を支えるのに必要な心臓、肺、肝臓、腎臓などの臓器がいろんな原因で働きを失い「臓器不全」という状態になったとき、正常な臓器と入れ替えてしまう手術です。その効果は絶大で、うまくいけば“命が助かる”だけでなく“元気になる”治療です。どの臓器も生きるために必要なものなので、臓器不全のときは身体がきつい、だるい、食欲がない、息切れがする、長く歩けない、などさまざまな症状で苦しむわけですが、臓器移植をすると本当に元気になり、オリンピックに出場してメダルを獲得した方もいます。

 肝臓の場合、肝硬変などで肝不全になると、黄疸(おうだん)が出る、おなかに水がたまる(腹水)、血を吐く、などの症状が出ます。肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、よほど肝硬変が進行しないと症状が出ず、黄疸が出たときは手遅れ、ということがよくあります。こうなると、肝移植でしか救命できません。

 病気の肝臓を取り出し、新しい肝臓に入れ替えて血管や胆管(胆汁の流れ道)をつなぎなおす手術をしてよみがえらせるわけですが、“誰から肝臓をいただくか”によって、「脳死肝移植」と「生体肝移植」の二種類があります。脳死肝移植は、脳出血などで脳が深刻なダメージを受け、戻る可能性がない方から臓器をいただくもので、1人の方から肝臓のみならず心臓、肺、腎臓など全ての臓器を提供いただけます。一方、生体肝移植は文字通り生きた方から、肝臓の一部を提供いただくものです。 肝臓は血管や胆管がうまく左右に分かれているため、右側または左側だけを取り出して移植することが可能なのです。肝移植、というと特殊な手術と思われるかもしれませんが、保険が適用される一般的な治療です。現在、沖縄では肝移植と腎移植がすでに行われており、やや特殊ですが膵臓(すいぞう)の移植もできるようになっています。保険の対象となる病気は決まっていますが、肝臓や腎臓が悪くなかなか治らない方は、一度主治医の先生にご相談してみることをお勧めします。

高槻光寿 琉球大学病院 消化器・腫瘍外科(西原町)

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