甲状腺機能低下症 さまざまな症状、重篤にも

甲状腺機能低下症 さまざまな症状、重篤にも

2025年08月18日 公開

 先日著名な歌手が「甲状腺機能低下症」で亡くなったとの報道があり、どのような病気か気になった方も多いかと思います。そこで甲状腺の働きと甲状腺機能低下の症状等について簡単に解説します。

 甲状腺は喉の前部にある甲状腺ホルモンの生成・分泌を行う小さな臓器です。甲状腺ホルモンは全身の臓器に作用し代謝を調整する重要な役割を果たしています。

 甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの作用が低下した状態を指し、疲労感、むくみ、寒がり、記憶力低下、便秘などさまざまな症状が現れます。認知症やうつ病だと思っていたら実は甲状腺機能低下症だったということもあり、人によって症状はさまざまです。また、心不全や意識障害など生命に関わる重篤な状態になることもまれにあります。

 甲状腺機能低下症の原因で多いのが慢性甲状腺炎(橋本病)です。橋本病は自己免疫によって甲状腺組織が破壊される病気で、成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人と頻度の高い疾患です。橋本病の大部分の人では甲状腺ホルモンは正常に保たれていますが、4人に1人の割合で甲状腺機能低下症になるといわれています。30~40代の女性に発症することが多く、妊娠・出産やヨード過剰摂取(海藻類、薬剤、造影剤など)により一時的に甲状腺機能低下を起こすこともあります。

 身体症状と血液検査、甲状腺エコー検査で診断し、甲状腺ホルモンの補充で治療を行いますが、しっかり内服できれば症状は安定します。

 日常生活で予防できることとしてはヨウ素の過剰摂取に注意をすることが挙げられます。ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料となる元素ですが、過剰摂取により甲状腺機能低下症を引き起こしうることもあるため、ヨウ素を多く含む海藻類(特に昆布)やうがい薬(ポピドンヨード製剤)を連日過剰に取ることは避けた方がいいでしょう。ただ、普通の食事やうがい程度では問題なく、あまり神経質になる必要はないとされています。

 甲状腺ホルモンは全身の健康維持に大きな影響を与えるため、疑わしい症状があれば医師に相談しましょう。

照屋理子 大浜第一病院 内科(那覇市)

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