ボツリヌス療法 まひした筋肉の緊張和らげ
ボツリヌス療法 まひした筋肉の緊張和らげ
2025年07月31日 公開
脳卒中は高い頻度で起きる病気です。脳卒中でよく見られる症状は体の半身にまひが出ることですが、まひが出た手足が曲がったまま固くなってしまうことがあります。筋肉の一部が病的に緊張しているからですが、これを痙縮(けいしゅく)と呼んでいます。
よく見られるのは手指が握ったままとなり開きにくい、肘が曲がる、足先が足の裏側の方に曲がってしまうなどです。リハビリテーションの障害となることがありますし、痙縮による姿勢異常が長く続くと筋肉が固まって運動が制限され、日常生活に支障が生じてしまいます。
痙縮の治療の一つにボツリヌス療法というのがあります。ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬を筋肉内に注射する治療法です。ボツリヌストキシンには筋肉を緊張させている神経の働きを抑える作用があります。そのためボツリヌストキシンを注射すると筋肉の緊張を和らげることができるのです。注射した筋のみ緊張を落とすことができる、まひが治るわけではない、全身投与ではないため副作用が少ない、3カ月で効果が弱まってくるため定期的な注射が必要という特徴があります。日本では手足の痙縮には2010年から治療できるようになり、患者さんによっては非常に効果の高い治療法となっています。
具体的には足首が内側に曲がったり、歩行時にかかとがつかなかったりする場合には、ふくらはぎの筋肉に注射をすることで、足裏をしっかり地面につけて安定して歩けるようになる可能性があります。肘や手首が曲がって服の袖が通しにくい場合には、腕の筋肉に注射して関節を柔らかくすることで服の脱ぎ着がしやすくなる可能性があります。
痙縮の治療には、他にも内服薬(飲み薬)、バクロフェン髄注療法、装具療法、外科的療法などがあり、患者さんの病態や治療目的を考慮して選択し、さらにリハビリテーションと組み合わせて行います。複数の治療法を用いることもあり、リハビリテーション科医など専門医に総合的に判断してもらうことをお勧めします。
福原香 豊見城中央病院 リハビリテーション科(豊見城市)
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