認知症の予防 生活習慣改善でリスク低減

認知症の予防 生活習慣改善でリスク低減

2025年01月08日 公開

 「物忘れを調べてほしい」との相談を受けることがありますが、血液検査をしてみると未治療の生活習慣病が見つかることが稀(まれ)ではありません。近年、認知症の予防因子も明らかになってきています。

 2019年にWHOが「認知機能の低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」を公表しました。その中では、身体活動(運動)および社会活動(いろいろな人との交流)の維持、過度な飲酒の禁止、禁煙、バランスのいい食生活、認知機能訓練、生活習慣病(肥満・高血圧・糖尿病・高脂血症)の管理、うつ病や難聴の管理が提言されています。

 健康沖縄21の調査によりますと、沖縄県の特定検診受診率は男性46・0%、女性42・6%と低く、特に40歳から59歳の男性が全国平均よりも10%程度低いことが報告されています。

 また肥満の割合も男女ともにすべての年齢で全国平均を上回っています。20~64歳の1日あたりの平均歩数も男女ともに全国平均を下回っています。生活習慣病のリスクを高める飲酒量(ビールだと男性1日1リットル、女性500ミリリットルが目安になります)をしている人の割合も全国平均を上回っています。どうやら認知症の予防という点で考えると沖縄県民の生活習慣は良いとは言えない状況であるようです。

 特定健康診断を定期的に受けて生活習慣病の早期発見や治療を開始する、少しの距離であれば車を使用せず徒歩で移動する、日々の飲酒量を生活習慣病のリスクを高めない程度に減らし休肝日を設ける、肉・魚・昆布・島野菜をバランスよく取り入れた沖縄の伝統的な食生活等を心掛ける、定年退職後も地域の趣味サークルに参加する等の生活習慣が推奨されます。

 近年の研究では生活習慣を改善することで認知症の発症リスクが40%程度軽減すると報告されています。

 アルツハイマー病では新規の治療薬も保険収載されてきており、認知症になった後の治療法の選択肢も増えてきています。「物忘れかな」と思ったら、主治医の先生に早めに相談してみるといいかもしれません。

新里輔鷹 琉球大学病院 精神科神経科/認知症疾患医療センター(宜野湾市)

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