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がんのオリゴメタ 保険適用で治療も普及
がんのオリゴメタ 保険適用で治療も普及
2024年01月24日 公開
近年、がん治療において「オリゴメタ」という概念が一般的になってきました。「オリゴメタ」とは英語の「オリゴメタスターシス」の略で、「オリゴ転移」または「少数転移」と呼ばれることもあります。がんが遠くの臓器に転移しているステージ4ではあるものの、転移の個数が少数個(通常5個以内くらいまで)にとどまっている状態を示します。
かつては一つでも遠くの臓器に転移があれば、がんは既に全身に広がっており、転移した箇所を治療しても意味がないという考えが主流でした。しかし実際には、遠くの臓器に転移があっても、転移の数が少数個のままで経過する症例もかなりあることがわかってきました。こうしたオリゴメタの状態であれば、抗がん剤やホルモン治療などの全身療法に加えて転移箇所へ手術や放射線治療などの局所治療を行うことで、5年以上、あるいは10年以上の長期生存を得られることがあります。
原発巣を手術や放射線治療で治癒した後に、遠くの臓器に少数個の転移が出てきて再発するケースを「オリゴリカランス」や「オリゴ再発」と呼ぶこともあります。原発巣が制御されていない場合よりも、さらに治療成績は良好です。
こうした状況を踏まえ2020年4月の診療報酬改定で、5個以内のオリゴメタに対する定位放射線治療が健康保険の適用となりました。定位放射線治療はピンポイント照射とも呼ばれ、病巣に対して多方向または周囲360度から放射線を集中させることで一度に高線量の放射線を照射する方法です。通常の放射線治療と比べて治療効果が高く、治療回数も1~5回と少なく済むことがほとんどです。
沖縄県内の放射線治療装置を有する病院間で行っている実態調査では、19年に行われた定位放射線治療の件数は115件でした。オリゴメタに対する定位放射線治療が保険適用となった20年には437件、さらに21年には562件と増えており、オリゴメタに対する定位放射線治療が県内でも急速に普及したことがわかります。ステージ4でも治療を諦めなくていい時代になってきました。
前本均 国立病院機構沖縄病院(放射線治療科)
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