“腎生”100年時代にむけて

“腎生”100年時代にむけて

2023年03月22日 公開

腎臓検査値、早めの確認を

 沖縄県は、人口比の透析患者数が多い県の一つです。透析治療が必要になるほど、腎臓の働きが弱った状態を末期腎不全と言います。その前段階とも言える慢性腎臓病の患者さんの数は全国で1330万人(成人8人に1人)と推定されており、新たな国民病として注目されています。

 腎機能は、老化によっても低下するため、超高齢化社会の日本では老化と慢性腎臓病が重なり、80歳を過ぎて透析治療を始める方が増えています。慢性腎臓病とは、慢性に経過する全ての腎臓病の総称で、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が主因です。多くの方は無症状で、検診時の血液検査や尿検査の結果、慢性腎臓病と診断されています。

 数値について具体的にいうと、腎臓の働きは血液の汚れの指標である血液のクレアチニン値(数値が高いほど腎機能が悪い)とGFR値という検査値で評価します。GFR値はおよそ100が正常なので「腎臓の働きの%表示(腎機能の実力)」と捉えられます。年齢にもよりますが、GFR60未満だと腎機能が低下していると判断され、慢性腎臓病と診断されます。

 一方、GFR60以上でも尿検査で蛋白尿や血尿が持続していれば、腎臓が病気による攻撃を受けている状況が示唆され、やはり慢性腎臓病と診断されます。攻撃が続けば、当然ながら腎機能は次第に低下する可能性が高いため、早めに対処する必要があります。

 このように、自らのGFR値や尿検査を確認すれば、腎臓の「これからの運命」はある程度予測することが可能です。しかし、検査値の異常があっても医療機関を受診していないと、慢性腎臓病の存在に気付かずに、長年放置されてしまいます。

 検査でがんが見つかり、自覚症状がないからといって進行がんや末期がんになるまで放置する方はいませんよね。同様に、末期腎不全の前段階と言える慢性腎臓病も早めに見つけて個々の現状に沿った的確な治療を受ければ、多くの場合、透析治療が必要な末期腎不全に至らずに済みます。

“腎生”100年時代を意識して、今一度、ご自身の検診データを見直してみてはいかがでしょうか。

古波蔵健太郎、琉球大学病院 血液浄化療法部

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