「物盗られ妄想」の気持ち
「物盗られ妄想」の気持ち
2025年07月31日公開
認知症を理解、感情を尊重 専門家の助言や介入も必要
スマホートフォンって充電が必要ですよね。スマホ依存の私は充電器が欠かせず、いつもの場所にすぐ充電できるように置いてあります。
ある日いつもの場所になく、辺りを探しますが見つかりません。そういえば、息子が勝手に使ったことがあったな、また黙って持って行ったのかな、充電できないと困るんだよな。息子の部屋を捜してみますが見つかりません。
待てよ? 娘かもしれない。娘に聞いてみよう。「サヤちゃん、パパの充電器、勝手に持って行った? 違う?」。じゃあ、やっぱり息子だな。だんだん腹が立ってムカムカしてきたところで、これって認知症の人が日々体験していることかもと気が付きました。
認知症は今や高齢者の5人に1人がかかるかもしれない病です。特にアルツハイマー型認知症の人はついさっきのことを忘れたり、思い出せなくなったりします。大事な物をしまった場所を忘れてしまい、目当ての物が見つからずに捜す羽目になります。見つからないと(私のように)誰かが勝手に持って行ったのではと思うのです。
そう考えると、「物盗(ものと)られ妄想」を理解しやすいかもしれません。
認知症の人はこのような体験を何度も繰り返すうちに、「誰かが勝手に持って行ったに違いない、そうでもないとこの状況を説明できない」と考えるようになるのでしょう。
妄想ですから、いくら言葉で説明しても、理屈を伝えても分かり合えません。対応はケースによって異なりますが、家族や介護者は認知症の人の感情を尊重しながら、認知症の特性を理解し、妄想を助長させない関わりが大切です。それは決して簡単なことではないので、専門家の助言や医療介入を要することもしばしばです。
物盗られ妄想は、認知症の人とその家族にとって大変な困難となり得ますので、その際は認知症疾患医療センターなどへ早めに相談されるのが良いでしょう。
平良直人 天久台病院精神科(那覇市)
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