介護や障がい福祉サービスに制限

介護や障がい福祉サービスに制限

2025年06月12日公開

有人12島が点在する八重山の課題は 家族や担当者に大きな負担 「生まれ島」に帰れないことも

 病後や術後の専門的な入院リハビリテーションを提供する回復期病棟があるのは、八重山地区では石垣島の当院上善会かりゆし病院のみです。私が地域にひとりだけのリハビリテーション科専門医として当地に赴任して7年目となりました。住み慣れた自宅に患者さんをおかえしする手伝いをしながら、日々感じている課題点を紹介します。

 当地は広い海域に12の有人島が点在する島しょ地区で、特に竹富町の人口密度は全国平均に対し約3%と顕著な低さです。このため離島や石垣島北部では居住地域で受けられる介護保険や障害福祉のサービスが大きく制限されることが多く、在宅復帰を困難にしたり、家族やサービス担当者に大きな負担をかけがちです。

 また福祉用具に工夫をしたくても簡易な汎用(はんよう)品しか手に入らなかったり、海況が厳しい時期にサービスが途切れたりと悔しい思いをすることもあります。

 最近は離島の入所施設は極めて限られてきており、石垣市でも施設に空きがなく、沖縄本島や内地の施設を選ばなければならないことも増えています。内地と同じ介護保険料を納めてきたにもかかわらず、愛する「生まれ島」に帰ることを断腸の思いで諦める方を目にすると胸が痛みます。

 当地の高齢化率は全国平均よりは低いものの、入院される患者さんは高齢で繰り返し入院して来られる方が多いようです。若いのに深刻な生活習慣病に倒れてしまう方も少なくありません。脳卒中や慢性腎疾患を抱える方が多く、地域の医療や介護を圧迫しがちであるのも大きな課題です。

 また平均給与が全国最下位レベルである沖縄県の中にあっても石垣市の市民所得は県平均に及ばず、退院後の生活に切実な経済的制限を抱える家庭は少なくありません。この問題にも目をそらさず向き合っていく必要を感じます。

 悲観的な話が続いてしまいましたが、患者さんと地域の結び付きがとても強いなど、八重山ならではの力強い長所に日々励まされています。これからも少しでも地域のお手伝いができればうれしく存じます。

古橋哲 かりゆし病院リハビリテーション科(石垣市)

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