リバウンドは「医学的に証明」された現象?

リバウンドは「医学的に証明」された現象?

2025年05月15日公開

脳の認識で食欲を刺激 専門家が語る新しい考え方

 肥満症は将来の心臓病や脳卒中、膝や腰の障害につながるリスクを高めるため、減量によって健康を守る意義は大きいとされています。しかし、実際には運動療法や食事療法で一時的に体重を落としても、その後体重が元通りか、あるいはさらに増えてしまう人が少なくありません。過去にさまざまなダイエット法が流行しては消えていったのも、長期的な成功がなかなか得られないためです。

 最近の研究では「セットポイント理論」という考え方があります。一度体重が増えると、脳が太った状態を“本来あるべき体重”と認識し、体重が減ると“不足”とみなして食欲を高めたり代謝を落としたりします。すなわち、同じ身長・体重であっても、一度太ってからやせた人は太ったことがない人と比べてより強く空腹感やストレスを感じ、リバウンドを招きやすくなります。今までさまざまな減量プログラムが試され、時に大きな減量効果を得ることに成功しましたが、ほぼすべての研究で食事指導や運動指導が終了するとリバウンドしています。皮肉なことに減量しても一時的でリバウンドすることが通常と“医学的に証明”しているのです。

 こうした現象を踏まえ、専門家の間では「意志の力だけで減量した体重を維持し続けるのは難しい」という見方が強まっています。そのため、心理面のサポートや周囲の理解を得ながら、生活習慣自体を根本的に見直すことが求められます。砂糖入りの炭酸飲料をお茶に替える、定食の大盛りを控える、間食を減らす、できるだけ歩くなど、昔から言われる基本的な対策を地道に続ける姿勢が重要です。摂取カロリーばかりに注目するのではなく、睡眠やストレス管理など、身体と心の両面をケアすることが、リバウンドを防ぐ鍵になるかもしれません。

 一度太ると減量を長く維持するのは難しいのが現実ですが、適切なサポートや段階的な目標設定を組み合わせれば、無理なく体重管理を行う道も確かに存在します。詳しい方法については、また機会があればお伝えしたいと思います。

村井俊介 県立八重山病院内科(石垣市)

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