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■プライマリ・ケアコーナー

扁桃の手術適応

真栄城耳鼻咽喉科 真栄城 徳 秀


はじめに
 
扁桃には口蓋扁桃、咽頭扁桃(アデノイド)、舌扁桃、耳管扁桃があるが耳鼻科医以外で手術適応が問題となるのは口蓋扁桃(俗に言う扁桃腺)の場合と思われるので口蓋扁桃(以下、扁桃)の手術適応について述べる。悪性腫瘍については省く。

扁桃の手術は摘出であり特別な場合を除いて部分切除は行われない。その適応となるのは以下の場合である。

1. 再発をくり返す急性扁桃炎(習慣性扁桃炎)
 
急性扁桃炎は高熱・扁桃への白苔付着・のどの痛み・耳への放散痛がみられる疾患である。両側に起こる事が多く抗生剤の内服あるいは点滴で改善するが年に3、4回以上急性扁桃炎をくり返す場合は習慣性扁桃炎と言われ扁桃摘出(扁摘)の適応となる。ただ、ここで一つ注意して頂きたいのは急性咽頭炎の有無である。扁桃炎のみの発熱なのか咽頭炎による発熱も併発しているのか見極める必要がある。扁摘を行えば扁桃炎による発熱は起こらなくなるわけであるが咽頭炎による発熱は起こりうるわけである。患者さんは扁桃をとれば熱はでなくなると思っているのでその辺の事を術前にムンテラしておく必要がある。

図1.左扁桃周囲膿瘍
2. 扁桃周囲膿瘍
 
急性扁桃炎の炎症が周囲に波及し膿瘍を形成したものである。片側に起こる事が多く高熱・痛みのほかに開口障害・軟口蓋の著しい膨隆がみられ扁桃は観察できない事もしばしばである(図1)。患者は独特のふくみ声を発し、食事摂取はできない。軟口蓋膨隆部の穿刺あるいは切開による排膿と抗生剤の点滴で改善するが、扁桃周囲膿瘍を同側に2度起こした場合は扁摘の適応である。

3. 扁桃肥大
 手術適応の前に以下の事を知っておいて頂きたい。口蓋扁桃には生理的肥大があり7、8歳頃最大となる。以後、若干小さくなるかほぼ同じ大きさであるが顔面骨は成長するため口腔内に占める扁桃の容積は相対的に小さくなる。扁桃を観察する場合、舌圧子で舌を押さえ「アー」と言わせるがその際、嘔吐反射をおこさせると扁桃が実際より大きく見えてしまうので注意が必要である(特に小児の場合)。また、扁桃の大きさは図2のごとくマッケンジーの分類によりI゜からIII゜に分けられているが手術適応は大きさのみでは決めない。大きくても睡眠時無呼吸または習慣性扁桃炎を起こさなければ手術の必要はない。小児の場合、生理的肥大がある関係上多くはII゜扁桃であり一見大きくみえる扁桃でも何ら症状のない子は多い。物が飲み込みにくそうであるとか睡眠時最初は仰臥位で寝ていてもいつのまにか側臥位やうつ伏せで寝ている事が多くないか両親に聞く必要がある。

扁桃の大きい子は仰臥位で寝ると扁桃が舌根部へ落ち込み無呼吸が起きやすくなるため自然と呼吸しやすい体位をとる。したがって扁桃の大きい子の手術適応を決める際には親からの問診が重要となる。成人の場合も小児と同様、特に症状がなければ扁摘の適応とならないが成人のII゜扁桃は小児に比べ習慣性扁桃炎を起こしやすい。また睡眠時無呼吸に関しては肥満、鼻炎の有無なども関与するため一概にすぐ扁摘とは言えないが終夜睡眠ポリグラフィー検査で閉塞型睡眠時無呼吸症候群の診断が得られII゜以上の扁桃であれば扁摘の適応と考えられる。

4. 病巣扁桃
 扁桃が他の疾患の原因あるいは他の疾患に悪影響を及ぼしていると考えられる場合、病巣扁桃と言い扁摘の適応となる。従来、病巣扁桃の診断には扁桃を刺激して体温・血沈・白血球の変化をみる扁桃誘発テストが行われてきたが陽性率と扁摘効果とは必ずしも相関しない事がわかってきたため最近は行われなくなってきており、病巣扁桃の確実な診断法はないのが現状である。しかし、掌蹠膿疱症・IgA腎症・胸肋鎖骨過形成症に対しては扁摘が有効な事がわかっている。特に掌蹠膿疱症は各施設で扁摘の有効性が認められており坪田らは扁摘を施行した318例を検討し改善率90%と報告している。私は掌蹠膿疱症に対しては全例扁摘を勧めている。IgA腎症は軽症の場合、扁摘は有効だが腎障害が進むにつれ扁摘効果も落ちると言われている。

しかし、堀田らは扁摘とステロイドパルスの組み合わせにより治療効果が一段とアップする事を報告しIgA腎症の根治的治療になりうるのではないかと述べている。胸肋鎖骨過形成症は掌蹠膿疱症ほどの高い有効率はないものの扁摘によって鎖骨胸骨端部の痛みが消える例があるのは事実であり保存的治療でコントロール不可の場合扁摘の適応と考える。最後に病巣扁桃の扁桃は二次疾患が何であれI゜またはI゜の中でも特に小さい埋没型扁桃が多い事を付け加えておく。

図2.マッケンジーの分類
I゜:前口蓋弓と後口蓋弓の間におさまるか後口蓋弓をわずかにこえるもの
II゜:I゜とIII゜の間
III゜:左右の口蓋扁桃が中央でほぼ接するもの



 

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