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■生涯教育

綜説
小児、新生児重症呼吸器疾患に対する
     一酸化窒素吸入療法の効果
     導入後二年間の臨床成績の検討

琉球大学医学部附属病院 周産母子センター
               吉 田 朝 秀、 安 里 義 秀
               同 小児科
               太 田 孝 男
要旨

重症呼吸障害に対し一酸化窒素(NO)吸入療法を施行した11例(小児1例、乳児1例、新生児9例)について、その効果と予後を検討した。NO吸入療法により酸素化指標が改善した症例が見られた一方、治療不応例もあり11例中6例に体外式膜型人工肺(ECMO)が導入された。肺低形成や遷延性肺高血圧症(PPHN)、重症のARDSに進展した症例は肺保護的治療を行いながらNO吸入療法の効果を速やかに判定し、呼吸状態の改善がない症例には遅滞なくECMOを導入する事で予後の改善が得られるものと考えられた。今後、小児、新生児領域のNO吸入療法は、より一般的な治療法となると考えられる。長期的な安全性や、未熟な児に対する適応の拡大、不応例に対する併用療法、ECMOへの移行基準の明確化などが今後の検討課題である。


【はじめに】

重症な新生児の治療は新生児集中治療室(NICU)において行われ、成人とは異なった独特な手技や治療方法が用いられることがある。

重症呼吸障害に対する一酸化窒素吸入療法(以下、NO吸入療法)も新生児に多く行われている治療法の一つであり、1992年にRobertsやKinsellaらによる臨床使用が報告1, 2)されて以来世界的に急速に広まった。

当院では2001年春より機材が整備され、主に小児、新生児の重症呼吸障害に対して本治療法を導入している。今回、特に新生児呼吸障害に対するNO吸入療法について、原理や適応、実際の投与方法や施行中の問題点などを概説すると共に、二年間の使用経験をまとめたので報告する。

NO吸入療法の原理

新生児は出生直後に第一呼吸(産声)によって肺呼吸を開始し、肺血管抵抗が急激に低下する。このとき、何らかの原因により低酸素状態が改善されずアシドーシスとなると、肺血管抵抗が高いままとなり、心房間及び動脈管におけるシャントの方向が右左(肺循環から体循環)方向へ傾き、下半身に強いチアノーゼが持続的にみられるようになる(図1)。このような状態は遷延性肺高血圧症(以下、PPHN)と呼ばれ、今なお新生児の予後不良な状態の一つとなっている。PPHNの原因となる疾患は様々であるが(図1)、治療として高濃度酸素の投与、人工換気療法、鎮静、相対的な体循環血圧の上昇を目的とした昇圧剤の投与、肺血管抵抗を低下させるための薬剤投与が行われてきた3)(図2)。NO吸入療法は従来の治療を強力に行ってもPPHNが改善しないときに適応が検討される。

一酸化窒素は強力な血管拡張作用を持ち、かつて血管内皮由来血管拡張因子EDRFと称されていた。その作用は直接血管周囲の平滑筋の弛緩によりもたらされる。NO以外の肺血管拡張薬(プロスタグランジン製剤、トラゾリン、ニトログリセリンなど)ではどうしても体血管抵抗の低下を伴うため相対的なシャント量が減少せず、PPHNからの脱却が得られない場合があるが、NOは血管拡張の本態的なアゴニストであることそして、肺循環への選択的作用から理想的な治療ガスとして期待され一定の効果を上げてきた4)。生理学的な作用の究明は今なお続けられているが、NO吸入療法の臨床的な利点は次の2点に集約される4)。

  1. NOは肺胞で直接吸収され速やかに拡散し、選択的に肺胞血管のみを拡張させることにより肺血管抵抗を低下させる。また、血管内に到達するとヘモグロビンと速やかに反応して活性のない亜硝酸イオンや硝酸イオンに代謝され、体循環には影響を及ぼさない。
  2. NOは比較的ガス交換能の残存した部分に分布し、その部分の血管拡張をもたらすことにより換気血流不均衡を改善させる。




 

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