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■沖縄タイムス2006年1月25日付朝刊に掲載


ー麻酔科医の悩みー

たかが「風邪」されど「風邪」

大浜第一病院・大見謝克夫

ちょうどこの季節はどこでも風邪が蔓延している時期にあたりますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。一言で風邪と言いましたが、一般の定義では「上気道の急性炎症症状を主体とする感染症を、風邪(または風邪症候群)あるいは普通感冒という」となる。

原因はウイルスによるものが90%以上をしめるが、そのウイルスにも多くの種類がある。症状も乾性咳嗽(コンコンという痰のからまない咳)・鼻汁・咽頭痛・全身倦怠・頭痛・発熱など多彩である。湿性咳嗽(ゴホンゴホンと痰のからんだ咳)となれば、炎症が下気道(肺の方)まで及んでいると考えるべきだが、全身状態が相当悪い人でなければほとんどの風邪は一週間程度で良くなってしまうので、多くの人は「たかが風邪じゃないか」と軽く見てしまいがちである。しかしながら、手術の麻酔を担当するわれわれ麻酔科医にとってはこれほど厄介な物はない。特にこれが小児の麻酔となるとさらに頭まで痛くなってしまう。

そもそも全身麻酔や手術の侵襲によって生体の感染防御能は低下してしまい、手術後は単なる風邪がそれだけにとどまらず、より重篤な全身疾患(気管支炎・肺炎・敗血症など)に進行する可能性があるのである。呼吸器系に影響の少ない局所麻酔下の手術においても、頻回の咳発作は時として麻酔操作や手術操作を狂わせ、予想外の事故を引き起こしかねないのである。特に小児では、これが重大な問題となることがある。

それゆえ手術を控えている患者さんに風邪症状を認めれば、麻酔科としてはよほどの緊急手術以外については主治医と相談し、手術を延期した方が良いのではないかと持ち掛けるのである。(決して麻酔をかけたくないからではありませんよ)

もっとも一見風邪症状に似ているが、麻酔をかけても問題ない状態もある。例えばアレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎・小児の激しく泣いた後などである。かといってそれが風邪でないとは否定し難い時もあるので、よけいにややこしくなる。しかも実際には手術部位や手術内容、麻酔の種類、さらには患者さんの都合により予定通り手術が行われ、問題なく退院できるケースも多いのである。

いずれにせよ、これから手術を受けられる方やいつかは手術を受けるかもしれないと思われている方は、風邪が重大な合併症を引き起こす可能性があるという事を十分に理解していただきたい。たかが「風邪」されど「風邪」である。


 

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