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■沖縄タイムス2004年6月30日付朝刊に掲載


無疹性帯状疱疹

原因不明の痛みの原因?

平良豊・泉崎病院

去年のこと、八十代の女性が「右のわき腹が痛い」といって、市内の病院で受診しました。心電図、エックス線写真、CT検査をして原因を調べましたが、特段異常がなく、痛み止めを処方されて帰宅しました。ところが、痛みは我慢できないくらい激しくなり、患者さまは再び外来を訪れました。医師は困ってしまい、泉崎病院のペインクリニック科を紹介しました。

早速患者さまは私の外来を訪れました。患部には異常なく、エックス線写真では第八胸椎に圧迫骨折があります。「変形した背骨が肋間神経に当たって、痛みが出ています。早速治療を始めましょう」「念のため、ウイルスの検査もしておきます」と説明しました。

しかし翌週も次の週も痛みが続きます。そのころやっと届いた外部委託検査結果を見ると、水痘・帯状疱疹ウイルス抗体価が強陽性でした。これは無疹性帯状疱疹に間違いありません。私は患者さまに初診時診断の間違いをわびて、正しい診断名を告げました。

その後は入院して神経ブロック療法を行い完治退院されました。もし初診の段階でウイルス検査をしていなければ、真の原因が分からないまま痛みが続くところでした。

幼少時に水疱瘡に感染すると自然に治癒しますが、一部のウイルスは神経の中に潜伏して、長い冬眠状態に入ります。その後何十年もたってからこのウイルスが神経の中で再び増殖をはじめて、最後に神経末端から飛び出して皮膚に皮疹をつくります。通常の経過は、始めに痛みが出て、次に赤い皮疹が帯状に広がります。これが帯状疱疹です。一週間ほどで水ぶくれに変わり、やがて枯れて治癒します。通常痛みは二-三週間ほどで消失します。

ところが、皮疹が治癒した後も強い痛みが続く場合があります。これは帯状疱疹後神経痛とよばれ、六十歳以上の高齢者では約40%に起こります。この神経痛の原因は、ウイルスに傷つけられた神経が直接痛みを発生させるためです。痛みの性質は「ヒリヒリと焼けるような」「ビリッと電気が走るような」あるいは「触るとチクチク、ツーンとする」など特徴的です。帯状疱疹は皮疹があれば診断は容易です。

しかし、あまり知られていないのですが、まれに皮疹がまったく出ない例もあります。文頭に挙げた例のように皮疹がなければ、診断は困難になります。この場合は血液中のウイルス抗体価が診断の決め手になります。原因がはっきりせず、痛みが続く場合は帯状疱疹を疑ってみる必要があります。


 

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