暑さと血圧


 夏に少ない脳出血

私は沖縄に赴任して五回目の夏を迎えていますが、体も順応したのか暑さ がこたえなくなってきました。しかし、無理をすれば体調を崩す恐れは十分 にあります。暑さと循環器系、血圧との関係についてみてみましょう。
 暑さのなかで体温が上がらないようにするために、体には調節機構があり ます。外界の温度が高い場合、まず皮膚の血管が広がり熱を逃すのに都合の よい状態になります。しかし、皮膚への血液量をふやすために心臓はよけい に働くことになるので予備能力の少ない人は注意が必要です。さらに暑さが 強いと発汗が増して放熱が盛んになります。
 暑さによる急性の障害としては日射病や熱疲労などがあります。汗の出過 ぎによって疲労感、めまい、吐き気、動悸・頻脈、低血圧、失神やけいれん などを起こすのが熱疲労と呼ばれるものです。血液は濃縮傾向にあり、中高 年者では心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性もあります。多量の発汗によって、 いわゆる脱水状態になった結果ですが、水分とともに汗の成分である塩類も 失われており、予防には塩分も一緒に補うことが大事です。炎天下のゴルフ などではジュース類よりもスポーツドリンクがよいわけです。さらにひどく なると汗も出なくなり、体に熱がこもって体温が異常に上がる結果、血圧は ショック状態で低下し非常に危険な状態になります。
 極端な話はさておき、暑さと高血圧との関係は、一年中暑熱にさらされて いる熱帯住民は西欧の者に比べて血圧が低いという報告があります。しかし、 亜熱帯の沖縄と本土を比べてみると、厚生省が行っている調査では血圧の高 い人の割合にははっきりした差は残念ながら出ていないようです。
 季節的な影響として夏は冬に比べて血圧が低くなる傾向があります。われ われが調査した本県の脳卒中の発症率では、高血圧が最も関係した脳出血が 夏に少ないという結果が得られており、これを裏付けるものと思われます。 降圧薬で治療を受けている高血圧の患者さんの中には血圧の低下のため夏の 間だけでも薬を減らしたり、中止(休薬)することができる人もいます。
 寝た姿勢や座った姿勢から急に立ち上がった時にめまいやふらつきを感じ る場合や、活動中に急に力が抜ける感じがする場合は血圧が下がり過ぎてい る恐れがありますのでかかりつけの医師に相談してください。降圧薬で一年 以上正常血圧を保っている人では、夏は薬の減量や休薬を試みるのによい時 期であります。しかし、実際に降圧薬を一時的にでもやめられるのは心臓や 腎臓などに合併症のない軽症の高血圧の人だけですから、夏ということだけ で、決して自分の判断で薬をやめたり、通院を怠ったりしないでください。 休薬になった場合でも高血圧が治ったわけではありませんから、いつ再上昇 するか分かりません。以前と同様に欠かさず通院することが必要です。
 体温の調節機構がうまく働く範囲内で体を動かし、十分な睡眠、バランス のとれた食事をとることが、血圧のためばかりでなく暑い夏を乗り切るのに 重要なことはいうまでもありません。

〜うちなー健康歳時記より〜
瀧下 修一