さくらんぼ


 首里に亡父の家と庭がある。家の回りの所々に巨石を配置し
その間にクロキ、ツゲ、ゲツキツ(ギキチ)、ソテツ、松などを植え奥の方には
大きなクバが据えられ石庭らしい趣きがある。
これらの樹木は日照りにも台風にも強く年中青々として、巨石とともに
古色蒼然いかにも明治の人の好みの庭であるが、母屋の前のヒカン櫻は弟が25年前に
ヤンバルのお土産の苗木を植えたものである。
その時は親指ほどもなかったそうだが今や大木となり、
四季折々のうつろいを鮮明に見せてくれる。
 2月初旬新葉と共に蕾が一斉に咲き出し、旬日で満開となり、
目白やうぐいすが密を求めて訪れる。
落花して小さい青い実が3〜4月には大きく赤く色づいてくる。
そしてこのさくらんぼを啄みに鵯が入れかわり立ちかわり訪ねてくる。
その頃からすっかり葉櫻となり、新緑が樹冠を掩い、あたりの空気まで緑に染め夏は
涼風を呼び油蝉やくま蝉がうるさい程鳴き夏本番である。
9月には葉が紅葉し10月には散りはじめ11月にはすっかり裸になる。
この後、雪でも降ってくれれば冬景色として申し分ないのだが……。


佐久本小児科 佐久本正彦

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