<報告>

第96回日本医師会定例代議員会
第55回日本医師会定例総会開催


副会長 稲冨洋明 


 みだし定例代議員会並びに定例総会が去る4月1日(土),日本医師会館に於いて開催され,平成9年度事業計画,予算,会費賦課徴収等にかかる審議が行われた。

 当日は,定刻10時に吉原議長の開会宣言により始まり,坪井会長の所信表明,糸氏副会長から平成8年度の会務報告が行われ,その後,引き続き各ブロックからの代表質問(7件),個人質問(19件)及び議事が進められ,活発な質疑が展開された。

 なお,坪井会長の所信表明挨拶及び議事については,以下のとおりであり,議事は全て原案どおり承認決定された。

 坪井会長所信表明
 第96回日本医師会定例代議員会の開催に当たり一言ご挨拶申し上げます。
 本日の代議員会でご審議をお願いいたします議案は,あらかじめご通知申し上げてあります通り,平成9年度日本医師会事業計画案,並びにそれに伴う予算案など第1号議案から第5号議案までの5つの議案でございます。

 とくに今回は会費賦課徴収額の増額をご審議いただきたく議案を上程しております。

 増額をお願いいたします理由を申し上げますと,近年の医療環境の多様化によって日本医師会の事業が多岐にわたり,かつ医療の高度化に伴う対応の精緻化が必要になり,とくに高度情報化への対応をはじめとする新しい分野の費用が増えていること,また平成6年の郵送料の値上げの影響による日医雑誌など日医の主幹事業ともいうべき部門の経年的な経費増や,医賠責事業への拠出の増嵩等により,財政的な逼迫状態が生じているためでございます。

 この現状に対処すべく,日医雑誌の送付方法の変更をするなど経費の節減に努め,平成6年より現在までに約6%の削減をいたしておりますが,財政を建て直すまでには至っておりません。また,会員相互扶助の精神のもとに創設されております日本医師会医賠責事業は,他の賠償責任保険と異なり,会員会費の一部をもって保険料に当てるといった特殊な他に類のない保険方式をとっておりますため,近年の如く医事紛争事例の増加,賠償額の増嵩が顕著になり,一般会計から医賠責特別会計への拠出額が増え,財政的な圧迫が生じております。

 この医賠責事業の危機的状況を改善するため,特別会計への拠出額の増額がどうしても必要になっております。

 このような状況を抜本的に改善し,医賠責事業の運営の健全化を進めるためには,賠償限度額の多角的な検討,相互扶助精神の涵養や医事紛争発生予防の具体的な啓発活動などが必要であると考えますので,医賠責運営委員会を設置し,健全運営を図ってまいる所存でございますが,当面する事態を克服して日医医賠責保険の特性を維持するためには,会費の増額も必要でございます。十分ご審議いただき格段のご配慮を賜りたいと考えております。

 さて,近年医療をとりまく環境は,国全体の構造変革の波の中で必然的に変わらざるを得ない状況になっております。

 日本医師会は,医療・保健・福祉における主導的立場の担い手として,高い見識をもって変革にあたらなければならない責務をもっています。

 とくに,先般来の厚生行政の質の低下を目のあたりにしたとき,国民のために医療政策の責任集団としての重責を感じざるを得ません。

 国民のために適正な医療を確保するためにも,また本格的高齢社会の社会保障制度の構築のためにも,地域に密着した医療政策を立案し,国民の選択によって立法化する手法を確立しなくてはなりません。そのためにシンクタンクとして日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の構想をご提示申し上げ,ご理解いただいておりますが,今般,研究員の選定など,組織造りが大容整いましたので,新年度から機能を開始いたします。最初は必ずしも十分な機能を発揮し得ないと思いますが,ご指導,ご支援をいただきながら早急に完備していきたいと思っております。

 言うまでもなく,日医総研創設の目的は,地域における医師会会員の持っている医療情報を基盤にして,国民に適正な医療を提供するための医療政策を作り上げることでありまして,行政の政策に対して医療を実践している日医独自の政策を提示して国民の選択に委ね,さらに政治が立法化するという政策決定の新しい過程を作り上げることが必要であり,わが国の医療構造改革を実現するために不可欠の事業であると考え設置するものであります。より深いご理解のもとに,ご支援いただきたいと考えております。

 次に医療保険改革についてお話しいたします。

 財政先行型の政府提案は,基本的な改革理念に乏しく単に健保財政の赤字対策にすぎないことから,日本医師会は抜本的改革案を提案して,その立法化を主張しているところでありますが,行政に依存した与党案との間には,理念的にも数字の上からもまだかなりの乖離があり,成案までにはまだ時間を要するものと考えます。

 ちなみに日本医師会の改革案は,21世紀に向けて医療構造の抜本的改革を目指す基本理念に根ざしたものであり,長・中期的対応と短期的対応に分けて,広範囲な項目を整理して提案をしているものであります。

 すなわち,現時点での改革の目標として3つの主軸を提案しております。@高度情報化社会への対応のため,医師会総合情報ネットワークの構築を基盤にして,まず医療情報の開示促進をはかり,患者にわかりやすい医療提供体制を実現する。A高齢社会への対応として,一般医療と老人医療の提供体制及び医療保険体制の二極化をはかる。そのために長・中期的計画として日本医師会医療政策会議が平成4年に提案している長期積立型医療保険制度並びに老人医療拠出金制度の見直し案の具体化をはかる。B医薬品の取扱いについて,物と技術の分離の理念を原則として給付方式を検討し,薬価差依存の診療報酬体系の改革をすすめる。医療費財政の恒常的確保のため,長期収載品目の価格決定のルール化等を短期的に実現をはかる,などであります。

 この3つの主軸の改革の進み方をみながら,全体的な整備をはかっていくという構想でございます。

 この政策実現のため,日本医師会会員全員の叡知を集積し,着実に成果をあげていきたいと考えています。

 この構想の路線上に,当然のことながら現在すすめられている介護保険制度の問題もあることはご賢察のとおりでございます。

 さて,先般起きました厚生行政の不祥事が,行政不信にとどまらず日本の医療への不信,不安にまでつながっていることは,大変遺憾に思います。

 この不信感を取り除き,国民が安心して生活ができるよう,日本医師会は地域医療にたずさわる会員諸先生のご努力によって万全を期さなければならぬと思っております。国民医療の確保のため,ますますのご研鑽を心からご期待申し上げます。

 先日来続きました愛知県,静岡県,鹿児島県等に発生した地震災害をはじめとした各地の天災等による被害にあわれた会員に対してのお見舞いを申し上げますとともに,被災地の医師会会員が常日頃,地域医療の確保に努力されている姿が,災害時の国民にどれほど安心感を与えているかという意味で,先生方のご努力に深く敬意を表します。

 また,会内に感染症危機管理対策室を設置し,感染症対策の体制を整えたところでありますが,最近再びO−157感染症の蔓延が心配されており,対策には地域での先生方のご尽力が欠かせないと考えております。対策室から適時,情報等をお届けして後方支援体制を強化することにしておりますので,協力方よろしくお願いいたします。

 以上,第96回定例代議員会の冒頭に当たり,いささか所信を述べ挨拶といたします。ありがとうございました。

 当定例代議員会終了後引き続き第55回日本医師会定例総会が開催され,坪井会長から下記事項について報告がなされた。
 (1) 庶務及び会計の概況に関する事項
 (2) 事業概況に関する事項
 (3) 代議員会において議決した主要な決議に関する事項



てっぽうゆり(与那原稔)


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