自然気胸

◆クマ蝉(六月)

突然、肺が破れる

 本格的な海のレジャーシーズンがやってきました。 しかし事故による犠牲者も増えてきますので注意しましょう。 シュノーケルの扱いに不慣れであったり、自分の体力を過信して事故に遭うケースも目立ちます。
 スキューバーダイビングも盛んで毎年観光客も大勢訪れています。 スキューバダイビングは、素潜りと違って、圧縮空気のボンベを背負って水中でも普通に呼吸ができるようになっています。 少しの講習を受ければだれでも(もちろん泳げない人でも)水中を魚のように自由に泳ぎ回ることができます。 しかしこのスキューバダイビングによる潜水中は地上と違って、圧縮された空気を呼吸しています。 普通に呼吸しながら潜水、浮上を繰り返していれば問題ありませんが、 水中で何らかのトラブルでパニックに陥ると、とっさに息をこらえたまま浮上してしまうことがあります。 すると肺内に吸い込まれた圧縮空気は膨張し、水面に到達する前に風船が破裂するように肺が破れてしまいます。 この状態を「気胸」と呼びます。 海上という特殊な環境のため、即、生命を脅かすことになります。
 もちろん、各地のビーチやダイビングショップ主催の体験ダイビングはこのような危険の少ない浅い海で行われています。 しかしこれからダイビングを始めたいと思われる方は、 きちんと講習を受け、正しい理論を学び、体調を整えてダイビングにチャレンジしてください。
 ところで、地上にいても特別なきっかけなしにダイビング中の事故のように肺が破れてしぼんでしまうことがあります。 それは「自然気胸」と呼ばれる病気です。 多くは十代、二十代の若い人に発生しています。 原因は肺の一部にもともと弱い部分があってここから空気が漏れるのですが、 原因が明らかでない場合や女性では月経の周期に一致して繰り返して起こる人もいます。
 これらは自然に治癒することも多いのですが、呼吸困難が強い場合や長引く場合、 あるいは再発したときに治療の対象となります。 治癒は胸壁からチューブを入れ、漏れた空気を吸い出して肺を膨張させ空気漏れが止まるのを待つか、 あるいは手術によって肺の表面の空気漏れのある脆い部分を縫合または切除します。
 従来の手術はわきの下を5〜10センチ切開し肋骨を押し広げて行っていました。 そのためかなりの痛みと苦痛を伴いました。 しかし4、5年前からビデオシステムを用いた胸腔鏡下手術が普及し、1〜2センチの切開を二ヶ所にくわえるだけで モニター上の映像を見ながら手術が行えるようになりました。 その結果、痛みの侵襲の少ない、美容的にも優れた手術が可能となりました。 従って、チューブを入れて空気漏れが止まるのと待つよりも手術した方が傷の大きさにも差がなく、 しかも早く治療するので、最初から積極的に手術を行う方針に変わりつつあります。 特に十代、二十代の若い人が多いので、進学、就職と大事な時期にこの病気にかかる人もおり、 入院日数の短縮や傷による痛みが少ないことは患者さんにとって大きな救いとなるでしょう。

(国吉 真行)

ドクターの談話室

自然気胸の本土並
 新聞原稿で、目然気胸は十代、二十代の若者に多く 発生すると述べました。紙面の都合で触れませんでし たがこの疾患は体型に大きな特徴があります。特に男 性の場合ですがやせ型で胴の長いヒョロッ≠ニした 体型の若者に圧倒的に多く発生します。原因は胸郭 の発育に肺が追いつけない為≠ニいう説もありますが 明らかではありません。
 以前の沖縄県ではこのような体型の若者は少なく、 従って当院を受診した患者の多くは他府県から県内の 大学に進学した学生や旅行中の若者等でした。しかし、 いつ頃からかはっきりしませんが最近の患者さんの多 くは県出身の若者で占めるようになっています。つま り体型的に先ほど述べた様なやせ型の人が多くなって いるのです。
 若者の体型が変化した最大の原因として食生活の変 化が考えられます。時期的にみて本土復帰が大きな要 因だろうと思われます。私が大学を卒業し、沖縄に戻 った昭和五十五年頃はまだスーパーの食料品コーナー は沖縄の特徴が強く出ていたのですが、転勤や、結婚 等で本士との人の交流が増し徐々に食生活が変化した のではないでしょうか?
 そして体型的に本土並に近づいた復帰後の世代が現 在、気胸の好発年齢に達しているのです。少なくとも 自然気胸に関しては確実に本士並みを達成したので す。本土の学会では沖縄県の高齢者の手術成績の良さ が羨望の的になっています。しかし、がんを含め多く の疾患が食生活から大きな影響を受けていることを考 えると、これまで沖縄県が誇ってきた長寿における優 位性は将来危ういかも知れません。
 復帰後の世代が成人病の適齢期を迎える時本土並み がどこまで進んでいるのか気になります。

(国吉真行)

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