頚部頚動脈狭窄症
◆慰霊の日(六月二十三日)
野菜嫌い、肉好きに多発
近年の高血圧治療の進歩により、脳卒中の中に占める脳出血(高血圧性脳出血)の割合が年々減少し、
逆に脳梗塞が増加している。
この閉塞性脳血管障害の中で、脳外科領域から注目されている疾患の一つに頚部頚動脈狭窄症がある。
頚部頚動脈狭窄症とは、外傷性を除くと、動脈硬化性の変化が総頚動脈分岐部周辺に起こり、
頚動脈の内腔が狭窄してくる状態をいう。
すなわち、首の動脈の壁に脂のカスや血栓(血の固まり)が沈着し、動脈の内腔が狭くなったのを指す。
狭窄が高度になると、脳血流の低下による脳の虚血症状を呈したり、
合併する潰瘍の部分から血栓を飛ばし、一過性脳虚血発作や脳梗塞を起こしてくる。
この疾患は血管造影で診断が確定するが、臨床的には、頚部に血管雑音を聴取し、
非侵襲的な超音波検査により手軽に診断が可能である。
アメリカ、カナダ、ヨーロッパで行われた大規模な共同研究から、
症候性の高度の狭寒例では、外科的治療が内科的治療よりも有意に成績が良いことが報告された。
すなわち、何らかの脳虚血症状で発症した70%以上の高度狭窄性病変は、
頚動脈を切開し、血栓を切除する頚動脈血栓内膜摘除術を行った方が予後が良いのである。
現在では、無症候性の中等度狭窄例でも、外科的治療が内科的治療を上回るとの報告も出始めている。
この疾患はこれまで、肉や脂肪を大量に摂取する西洋人に多い疾患であったが、わが国でも、
食生活の欧米化とともに年々増加してきている。
長寿県として知られているわが沖縄では、このような疾患は一見無縁であるかの印象を受けるが、
必ずしもそうではない。過去二年間の間に、手術的治療を必要とする高度の狭窄または潰瘍合併例に
十回の血栓内膜摘除術を行った。
幸いにも、この手術を受けた患者は、その後は脳虚血発作を起こさなかった。
興味のあることに、これらの患者には共通の食生活上の特徴が見られた。
まず第一に、大の野菜嫌いで野菜はまったく食べないことである。
第二に、ヒージャー(やぎ)汁が大好きで、どんぶり三杯以上、たいていが、泊まり込んで翌日まで食べていた。
時に、月に数回もこのような機会に恵まれていたことだ。
一例だけはヒージャー汁を食べていなかったが、同様な野菜嫌いで、豚肉の白い脂身(脂抜きをしていないシルシーサー)
が大好物、倒れて病院に運ばれる前日まで、ご飯にシルシーサーを乗せて食べていたとのことである。
このように、偏食に過食が加わっては、最近、再評価されつつある沖縄の伝統的食文化もその価値を失ってしまう。
注意したいものである。
(仲宗根 進)
メニューヘ