■琉球新報99年12月18日付夕刊に掲載 

毎日飲酒し仕事しない息子

問い  息子(三十七歳)が一日中、酒を飲み、家にこもっています。十八歳ごろから酒を覚え、毎晩飲んでいましたが、数年前に仕事をやめてからは昼間も飲むようになり、今は毎日、飲んでいるか寝ているかの状態です。働くように言っても一向に仕事もせず、やる気も元気もありません。飲む量は泡盛を毎日六―七合。時々、いらいらしたり、眠れないようです。一度は断酒会にも連れていったのですが、それっきりです。どうしたら息子が立ち直ってくれるでしょうか。

 (71歳・女性) 

<答えるドクター>
長崎文江(琉球大学医学部精神神経科) ・・・・・・・・・・・・・・・・

「底付き体験」が重要/内科から精神科につないで
答え
 お母さんは息子さんを「一度断酒会に連れていった」ということから、息子さんはアルコール依存症であると疑っていらっしゃるのでしょう。現在の「毎日泡盛を六―七合飲酒」し、「仕事をせず」「飲んでいるか寝ているか」の状態は、連続飲酒発作であり、依存がかなり進行した状態と思われます。
 「どうしたら息子が立ち直ってくれるか」ということですが、まずはお母さん自身がどのようなことを問題と感じ、どのような解決を望んでいるのかをはっきりさせる必要があると思います。息子さん自身の問題と、お母さん自身の問題は、実は全く別のものです。息子さんはもう成人した大人ですから、行動を強制できないことはすでに経験済みだと思います。現在の生活を変えたいと感じているのでしたら、息子さんに対するお母さんの対応を変えてみてはどうでしょうか。
 アルコール依存からの回復には、断酒会への参加、内科的治療、精神科的治療などの方法がありますが、本人が「このままでは自分はダメになる」と感じ(底付き体験)、本気になって「何とかしなければ」と行動する気にならなければ始まらないものです。経済的な問題、人間関係、身体的な健康、精神的なことなど、きっかけはさまざまですが、そのときを待つことです。
 例えば、イライラしたり眠れなくて困ったときに「病院でお薬をもらってみようか」と精神科を受診することがあります。また、連続飲酒発作のあとには必ず、食事や水さえ身体が受け付けないというかなり苦しい状態が来ますが、その時には進んで病院で治療を受ける気になることが多いものです。
 まず内科で身体の状態を調べてもらいましょう。アルコールの摂取を長期間続けると、肝障害(脂肪肝、肝硬変)、胃炎、心筋症、心肥大、動脈硬化、末梢(しょう)血管拡張、腎(じん)障害、手指や舌の振戦、多発神経炎、そのほかにもさまざまな身体症状が見られます。その後に精神科へ紹介してもらい、依存の治療へとつなげることができると思います。
 県内にはアルコール専門病棟のある精神科病院がありますので、一般の精神科とは違う環境で入院治療を受けることができます。断酒会は各保健所で行われているほか、幾つかの精神科病院で行われています。本人だけでなく家族の会合もありますので、お母さんだけの参加でも他の家族の体験を参考にできるかもしれません。
 最後に、アルコール問題の根底にうつ病や精神分裂病などの他の精神疾患がある場合がありますので、やはり一度は精神科できちんとした診察を受けさせることをお勧めいたします。


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