■琉球新報99年12月4日付夕刊に掲載 

低身長の成長ホルモン治療

問い  小三の息子(九歳)は一一五センチ(マイナス3SD)と背が低いため、九月から低身長の成長ホルモン治療を受けています。毎日、私が自宅でホルモン剤を注射しているのですが、主治医からは身長が一五六センチになるまでか、十五歳になるまで注射を続けなければいけないと言われ、副作用が心配でなりません。周りからは「ホルモン注射を打ちすぎると白血病になる」とか「ほかの病院でも検査をしてみたら」と言われます。本当に大丈夫でしょうか。

 (女性) 

<答えるドクター>
高良吉広(安謝小児クリニック) ・・・・・・・・・・・・・・・・

深刻な副作用はない/持病ある場合は注意必要
答え
 息子さんの身長は一一五センチですので、同年齢(九歳二カ月)平均一三一・五センチに比べると一六・五センチ低く、標準偏差で評価するとマイナス3・06SDとなります。これは学校の同級生の肩ぐらいの背丈、あるいは六歳三カ月(平均身長一一五・一センチ)に相当すると考えれば分かりやすいでしょう。
 成長ホルモンの補充療法を受けているとのことですが、他の薬と異なり、週何回か皮下注射を家庭でする治療法なので、初めての方は不安もあるでしょう。成長ホルモンは、飲むと消化されて効き目がなくなります。どうしても注射をしてもらうしかありません。また、体重当たりで計算された投与量を一度に注射するのではなく、何回かに分けて、できれば毎日注射するのが最も効果的なのです。息子さんにはこの点をよく説得し、根気強く治療を継続してほしいと思います。
 成長ホルモンによる低身長の治療はいつまで続けるかはいろいろな場合がありますが、@骨の硬さが成人に近くなり、成長ホルモンの効果が期待できない時(骨年齢で男が十七歳、女が十五歳と評価された時)A患者さん自身が目標とする身長に到達し、その後の治療の継続を望まない時、実際はB低身長にあまりこだわらない患者さんが、注射の痛みや煩わしさから治療を中断することが多いようです。成長ホルモン療法の成果を十分発揮するために、子供としっかり話し合い、治療の継続を納得させ励ましてやることが大切です。
 低身長児の治療費は全額公費で賄われていましたが、一九九八年二月から対象児がマイナス2・5SD以下に限定され、これを超える低身長児は年間約五十万円の自己負担が必要になりました。質問者の「身長が一五六センチになるまで…」は、この医療費の負担制度と混同しているところがあるかと思います。
 成長ホルモン治療の副作用についてのご心配ですが、今のところ、それほど深刻な問題はありません。副作用についての調査研究システムがあり、私も参加させてもらっていますが、全世界の国々からデータを集積して成長ホルモンの副作用の有無を調べます。これまでの調査では、白血病も含め、成長ホルモンの副作用による異常は否定されています。
 ただし、もともと何かの病気を持っている場合は注意が必要です。白血病だった子は大腿(だいたい)骨頭滑り症や糖尿病、脳腫瘍(しゅよう)後の子は頭痛やけいれん、ターナー症候群の子は脊椎側弯(せきついそくわん)などが報告されています。しかし、これらも成長ホルモンの副作用ではなく、もともとの病気によるものと考えられています。
 最後に低身長児のほとんどは健康でありますが、平均身長との格差が著しい場合、成長ホルモンのほかにも甲状腺(せん)ホルモンや性ホルモンの異常、また脳腫瘍が原因となっていることもありますから、小児科医と相談しながら子供の発育に関心を寄せてほしいものです。


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