■琉球新報99年11月20日付夕刊に掲載 

小5の娘がひどい腋臭

問い  小五の娘。八月ごろから、腋臭(わきが)のにおいがつくようになりました。夜になると、特にきつくなります。本人も気にして服を着替えたり、手を上げないようにしています。先日のラジオで、腋臭用のクリームを塗ると一週間においが気にならないというのを聞きましたが、ホルモン剤が入っていたらと心配です。父親もひどい腋臭で、香水や制汗剤を使っています。遺伝だとは思いますが、いい対処法があれば教えてください。

 (40歳・女性) 

<答えるドクター>
新垣実(スキンクリニック新垣) ・・・・・・・・・・・・・・・・

まず洗浄や制汗剤を/効果なければ手術も
答え
 腋臭症とは、わきに密集するアポクリン汗腺(せん=汗の腺の一種)から分泌された汗の成分(低級脂肪酸)が、皮膚の常在菌によって分解され、その分解産物が異臭を放つもので、汗の中に低級脂肪酸を多く含む体質の人が腋臭症になると考えられています。アポクリン汗腺は思春期に発達するため、女子では生理の始まるころから腋臭が発生します。男女差はほとんどなく、優性遺伝をするといわれ、父親が腋臭症の場合、二分の一の確率で子に受け継がれます。
 【保存療法】わきがを防ぐにはタ局所を清潔に保ち、細菌の繁殖を防ぐチ制汗剤を用いて汗の量を減らすツマスキング(消臭)を行う―ことです。
 細菌の繁殖を抑えるには、頻回の洗浄が効果的です。朝夕のシャワー浴を習慣づけ、逆性せっけんなどの殺菌力の強いもので洗浄します。女性の場合、わき毛を処理するのもよいでしょう。夏場、発汗量が多い場合は、アルコールや殺菌剤入りのデオドラント製剤でふくと効果が持続します。
 制汗剤には、パウダースプレー式、ロールオンタイプ、パウダースティックがあり、使用感は前者が優れますが、わき毛を生やす男性の場合、後者が皮膚に到達しやすいので効果が確実です。日本で市販されている制汗剤の成分は、ほとんどがクロルヒドロキシアルミニウム(ACH)で、効果は四〜六時間です。
 また、ホルモン剤が腋臭症の治療に用いられることはないと思いますが、女性ホルモン(エストロゲン)にはアポクリン汗腺の増殖を抑える作用があり、腋臭は女性よりも男性の方が強いといわれています。
 【外科療法】保存療法で効果が不十分な場合、汗腺を切除する手術(皮弁法)が行われます。手術は局所麻酔(直接脇に注射する)で、しわに沿って五aほど切開し、皮膚の裏側からはさみで汗腺を直接切除します。術後は三、四日腕を安静にするため、両側同時にする場合は入院が必要です。片側ずつの手術だと通院治療も可能です。
 腋臭症の手術では、皮膚がダメージを受けるため傷の治りが悪く、しばしば傷跡が目立つケースがあります。この場合、あらためて傷跡の修正術(瘢痕=はんこん=形成)を受けると、きれいな傷跡に置き換えられます。また傷跡を小さくする方法(吸引法)も考案されています。
 若い女性で、どうしてもわきに傷を残したくないという場合や、においがさほどきつくない場合、永久脱毛を行うことで、ある程度の効果が期待できます。細菌は毛穴に多く存在しているので、脱毛処理によって毛穴が委縮し、細菌の繁殖を抑えることで腋臭が軽減します。しかし確実な効果を期待する方や、わきの多汗症で汗の量を減らしたい方は、手術以外の方法では効果がありません。
 【心のケア】日本人では実際の臭気の存在よりも、必要以上に強い病識を持つ症例が多く、腋臭を気にするあまり、他覚症状がないのに腋臭症と悩んでしまうケース(体臭妄想・体臭恐怖症)があります。また精神的発汗(緊張すると汗をかく)を腋臭症と思い込むケースもあります。この場合には手術療法は無効であり、制汗剤の使用とともに精神安定剤を併用すると効果があります。家族が臭気を感じないのに本人が思い悩んでいる場合には、精神神経科または心療内科に相談しましょう。


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