■琉球新報99年4月23日付夕刊に掲載 

せきやくしゃみで尿もれ

問い  二、三年前から、せきやくしゃみが出る時に下着を汚してしまいます。去年の暮れに風邪をひき、一カ月余せきが続いた時には特にひどく、せきが出るたびに下着をぬらし、生理用品で対処したりと、大変煩わしい思いをしました。ぼうこうの手術によって尿もれが解消できると、前に新聞で読んだ覚えがあります。どんな手術で何日くらい入院するのでしょうか。高齢でも可能でしょうか。

 (76歳・女性) 

<答えるドクター>
菅谷公男(琉球大学医学部泌尿器科) ・・・・・・・・・・・・・・・・

女性に多い腹圧性尿失禁/体操や内服薬、手術で治療
答え
 尿がもれることを尿失禁といいますが、尿失禁にはいくつかの型があります。
 せきやくしゃみ、笑った時や跳びはねた時のように、おなかに力が入った時の尿失禁は腹圧性尿失禁といいます。腹圧性尿失禁は成人女性の三―四人に一人の割合でみられる、女性に特有の尿失禁です。  原因は骨盤底筋群という骨盤の下で内臓を支えている筋肉がゆるんだためです。この筋群には尿をもらさないように尿道を締めている外尿道括約筋や、便をもらさないように肛門(こうもん)を締めている外肛門括約筋などが含まれます。ふだん尿をためている時には外尿道括約筋を含む骨盤底筋群が締まっていて尿道を締めています。排尿の時には骨盤底筋群がゆるんで膀胱(ぼうこう)が下にさがり、尿道がゆるみます。
 腹圧性尿失禁の方は骨盤底筋群が常にゆるんでいますから、尿をためている時にも膀胱が下がって尿道の締まりもゆるく、排尿する時の膀胱と尿道の状態に近いのです。そこに強い腹圧が加わると、膀胱の中の尿が押し出されて尿失禁になります。
 腹圧性尿失禁の治療は、骨盤底筋群を鍛える骨盤底筋体操と内服薬や手術による治療法があります。
 骨盤底筋体操は肛門を締めて外尿道括約筋を含む骨盤底筋群全体の締まりを回復する療法で、軽度の腹圧性尿失禁ではこの体操だけで尿失禁は治ります。内服薬は膀胱と尿道の境界にある内尿道括約筋を締めて膀胱をゆるますような薬を用いますが、内服薬での治療と骨盤底筋体操を一緒に行います。多くの方は内服薬と骨盤底筋体操で治りますが、それでも尿失禁が続く場合は手術療法となります。
 手術療法にはさまざまな手術方法があります。簡単なものでは内視鏡で尿道の壁にコラーゲンを注射して尿道を狭くするコラーゲン注入療法がありますが、尿失禁の再発率の高いのが難点です。恥骨のすぐ上の腹壁と膣(ちつ)内を三aほど切開して尿道のまわりの組織を恥骨のすぐ上の腹筋に糸でつり上げる尿道つり上げ術もあります。
 現在推奨されているのは膣と尿道の間に小さな特殊な布をあて、これを前方に引き上げ恥骨に固定する尿道スリング手術です。手術時間は一時間ほどで、恥骨の所と膣内にそれぞれ三aほどの切開を入れるだけです。入院期間は約二週間です。これらの手術を行うのに年齢は問題になりません。
 尿失禁は意外に多くの方が困っている病気です。治りますから恥ずかしがらずに泌尿器科を受診し、快適な生活を取り戻しましょう。


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