■琉球新報99年4月9日付夕刊に掲載 

11年間も重いチック症で悩む

問い  二十二歳の息子が小六のころから十一年間、重いチック症に悩んでいます。主な症状は、頭を小刻みに動かしたり、手を動かしたり、訳の分からぬ言葉を大声で発するなどです。日中は部屋に閉じこもり、夜は特定の友人と酒やたばこにふける日々が六、七年続いています。病院では「使えるだけの薬は使った。あとは自分の意志力しかない」といわれました。トゥレット症候群とか多発性チックとも呼ばれるそうですが、県内または本土に専門病院はないのでしょうか。

 (男性) 

<答えるドクター>
石津宏(琉球大学医学部精神衛生学) ・・・・・・・・・・・・・・・・

脳疾患など原因は諸説/難治なら精神科で相談を
答え
 チックとは、素早い異常運動が目的もなく頻回に繰り返されるものをいいます。頭を小刻みに動かしたり、しかめ面をしたり、しわを寄せたり、まゆを上げたり、まばたきしたり、口を曲げたり、首を振ったり、肩をすくめたり、体をねじったり、手や腕を動かしたり、さまざまな現れ方をします。時には舌を突き出したり、頭や体をたたいたり、跳び上がったりすることもあります。
 一般に学童期に、殊に小学校低学年に発症しやすく、一過性で症状がやがて消失してしまう場合が多いのですが、重症でたくさんの無意味な異常運動を複雑に繰り返す多発性、全身性のチックは治りにくく、慢性経過をして大人になっても良くならず、かえってひどくなってしまうものがあります。
 これは「チック病」「多発性チック」「ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症状群」(略してトゥレット症状群)などと呼ばれており、特徴的なことは、しゃっくりやせきばらい、のどや鼻を鳴らしたりするほか、「ウッウッ」「シュシュ」と発声ないし呼吸性のチックが見られることです。
 「アーアー」「クークー」「キイキイ」「ワンワン」など、単純音から動物の鳴き声に似た音を出したり、「クソ」「シリ」「キッス」「オッパイ」「バカ」「シネ」など汚い言葉遣いや性に関する卑猥(ひわい)な内容の言葉を大声で繰り返したり、中には全く意味不明の訳のわからない言葉を大声で言ったりすることもあります。
 一般に精神的な緊張で症状が増加したり、あるいは逆に抑えこまれたりしますし、睡眠中は症状が治まります。
 トゥレット症状群の原因には諸説がありますが、主として脳の器質的な原因、例えば、脳炎の後遺症や多発性の微細な脳損傷とか錐体外路系の脳疾患などを挙げたり、脳波の異常を指摘する学者もありますし、心理的要因や幼少期の生育歴上の環境要因を挙げる人もいます。
 注目すべきこととして、強迫観念(ぬぐってもぬぐっても浮かんでくる観念)や自生念慮(勝手に頭の中にひとりでに浮かんでくる奇妙な考え)などがあって、黒い人影が見えたり、異様な雰囲気を感じたり、だれかに命令されたり、あやつられたり(させられ体験)するようになると、精神分裂病へ移行していくケースもあることです。このような場合には向精神薬のフェノチアジンやブチロフェノンなどの薬物療法が行われます。
 一度、心療内科や精神科の専門医を訪ねることをお勧めします。


<健康相談室>メニューヘ