■平成9年8月22日琉球新報夕刊掲載より 

出産後、指先がしびれる

問い  今年一月に出産しましたが、三月下旬ごろから両手の先にしびれが出てきました。特に人さし指、中指、薬指の三本は付け根のところまでしびれています。我慢できないほどではなく、生活にも支障はありませんが、ずっと続いているので気になります。赤ちゃんを抱っこしているせいでしょうか。四年前に手のひらの多汗症の手術を受けましたが、これと関係はありますか。

(26歳・女性) 

<答えるドクター>
金谷文則(琉球大学医学部整形外科助教授)・・・・・・・・・・・・・・・・

手根管症候群か/副子療法で大半が軽快
答え
 手指のしびれは、頭から指先に向かう神経がどこかで障害されていることを示しています。相談者の症状からは、手首のところで正中神経という神経が圧迫される「手根管(しゅこんかん)症候群」が最も考えられます。
 正中神経とは、親指から薬指の知覚と親指の運動をコントロールしている神経で、手首のしわの下で骨と靭帯(じんたい)に囲まれた手根管を通過します。妊娠や骨折による手首のはれにより手根管内圧が上昇すると、正中神経が圧迫され、主に人さし指から薬指がしびれたり親指が動かしにくくなり、これを手根管症候群といいます。
 このほか手首を曲げると正中神経が圧迫されやすいので、手首を曲げることが多い編み物や楽器の演奏、整髪業などでも手根管症候群を生じ、二十―六十代の女性に好発します。妊娠中や出産後一年以内は手がむくみ、出産後一年は赤ちゃんを手首を曲げて抱っこすることが多いので、特に手根管症候群を生じやすいと言えます。
 手指のしびれや親指が動かしにくいことのほかに、朝の三―四時ごろに手がしびれて目が覚め、手を振ったりもんだりするとしびれが改善するのも特徴の一つです。このほか、手首を一分間曲げていると手指のしびれが強くなること、手首の中央を軽くたたくと人さし指から薬指にしびれが走ることも特徴に挙げられます。
 治療法として、薬物療法と、手首が曲がらないようにギプスなどをあてる副子(ふくし)療法があります。授乳中であれば薬剤は避けた方が良いので副子療法を行います。軽症例では、夜間寝る時に副子を装着することにより手指のしびれは軽快します。中等症の方には、日中も炊事や育児に支障のない副子を装着してもらっています。また赤ちゃんの抱っこはできるだけご主人にしてもらうのも良い方法です。妊娠、出産後の手根管症候群は保存的な治療法でほとんどの例が軽快します。
 また、多汗症の手術とは関係がありません。
 病院に行く目安として、手指の触った感じがおかしいこと、はしが使いにくかったり、クリップが拾いにくいなどの運動障害があること、週に一、二回以上手のしびれで目が覚めることなどであり、このうち一つでもあれば整形外科を受診してください。
 手根管症候群の患者さんの約二〇%が肩こりを訴えますが、頚椎(けいつい)椎間板ヘルニアでも手指のしびれや肩こりが出ます。また手ばかりでなく足もしびれている場合は神経炎によることがあり、病院受診をお勧めします。また最近では、透析患者さんの手のしびれの原因として手根管症候群が多いことが分かってきています。


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