■平成9年6月13日琉球新報夕刊掲載より 

椎間板ヘルニア手術せず治るか

問い  二月に椎間板ヘルニアと診断され入院。リハビリ、けん引、電気治療、注射、はりなどの治療を受けましたが、一向に快方に向かわず、四月に退院しました。その後、水泳や健康トレーニング、健康食品などを試みましたが、変わりません。
このまま長期の治療が続くと、職場復帰(調理師)や経済面でも困難を極めるため、一日も早く適切な治療を見つけたいと思っています。手術しないでも治るとも聞きましたが、本当でしょうか。他の治療法があれば教えてください。

(48歳・男性) 

<答えるドクター>
佐藤栄(琉球大学医学部整形外科講師)・・・・・・・・・・・・・・・・

軽症なら保存治療で可/改善しなければ手術を
答え
 お答えする前に病気について簡単に説明します。椎間板は背骨の一つ一つである椎骨(ついこつ)と椎骨をつなぎとめ、屈伸ができるよう動きを受け持ちます。アンパンに似た構造で、中心の髄核(ずいかく)があんこにあたり、周りの線維輪(せんいりん)がパンに相当します。直立して歩く人間の椎間板はクッションとして酷使される運命です。腰椎椎間板ヘルニアは、髄核が線維輪を破って斜め後ろに突出し(これがヘルニア)、神経を圧迫して下肢痛や腰痛を生ずる病気です。
 手術しないで治るかというご質問ですが、患者さんが十人いたとして大体七人の方は手術せず他の治療法で治ります(これを保存治療といいます)。三人の方は手術が必要です。手術のタイミングは、できるだけ保存的に治療し、それで満足がいくほどに治らないときです。貴兄はこれだけ多くの治療を受けても働けない状況なので、そろそろ手術を考える時期と思います。
 ピラミッドを思い浮かべてください。横幅が患者さんの人数、段々の高さが治療法です。最初は安静を指導します。次に治り具合(正確にいえば、治らなさ具合)に応じ、お手紙にあるような治療を組み合わせて行います。入院する方が効果が上がります。軽症の方から早い段階で治っていき、高い段階へ登るほど人数が減るわけです。
 手術はピラミッドの頂上に位置します。@椎間板を切除して間接的にヘルニアを縮小させる手術(経皮的椎間板切除術やレーザー手術)A椎骨を少し削ってヘルニアを切除する手術Bヘルニアに加え椎間板も切除して自分の腸骨を移植する固定術―があります。
 @は局所麻酔下に小さな皮膚切開で済むため安易な気持ちで受けがちですが、二十―三十歳代で、腰痛よりも下肢痛が主で、ヘルニア突出部分が小さい方が対象です。したがって、ごく一部の患者さんに限られますし、また多くの場合、症状を出している椎間板は一つなので、一度で治らないからといって他の椎間板に二度、三度と行う手術ではありません。
 Aは最も広く行われている手術で、一時間くらいで終わります。
 Bは腰痛が強い方や重労働に従事する方に適した手術で、最近は椎骨に金具を入れるので術後一週間くらいで起き上がることができます。
 最後に、治療のピラミッドは個人の症状や環境で違うことを強調しておきます。他人からの情報は治療法決定の手掛かりになりません。今までお話しした治療の流れを理解している医師ならば、患者さんの事情に応じて手術の相談に乗ってくれるはずです。


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