■琉球新報2002年1月15日付夕刊に掲載 

過敏性腸症候群と診断

問い  八年前の産後、下痢症になり、今年春には急性大腸炎で入院、ずっと下痢で苦しんでいます。また吐き気や食欲不振、夜中に寒気がしたり、低血圧、手先がしびれるほどの冷え性もあります。「過敏性腸症候群」と診断されたこともありますが、薬も効果がありません。寝不足のため安定剤も服用しています。体質改善の良い方法を教えてください。

 (女性・37歳) 

<答えるドクター>
小波津寛(沖縄県医師会) ・・・・・・・・・・・・・・・・

妊娠、分娩も誘因/ストレス発散の工夫を
答え
 テストを受けたり、心配ごとがあるなどのストレスがあったときに腹部不快感、腹痛、下痢、便秘、下痢と便秘が交互にある交代性便通異常などを経験したことのある人は多いのではないでしょうか。また、週末は何ともないのに月曜日になって会社に出勤することを考えると下痢になり、トイレにかけ込むという人もいると思います。ストレスの多い現代社会において、ほとんどの人がストレス刺激による何らかの消化器症状を経験しているといっても過言ではありません。
 医学的にもストレスが脳のみならず、消化管に作用することも明らかにされています。つまりストレスと消化器疾患、消化器症状は切っても切れない関係にあるといえます。
 過敏性腸症候群は「腸管の機能異常に基づき、運動、緊張の高進、そのほかの不調和が起こり、それによって種々の不定な腹部症状を伴う便通異常が持続するもので、その取り扱い上、多くの場合、心身医学的立場からの考慮が重要な意味を持つ症候群」と定義されております。消化器症状以外にも、全身性の自律神経失調症に基づく、めまい感、頭痛、どうきなどの症状もあり、さらによく聞くと、不安感、抑うつ感、睡眠障害といった精神症状を伴っている場合もあります。
 診断に際しては、問診などによって精神・心理的因子とのかかわりが示唆され、注腸X線検査、上部および下部消化管の内視鏡検査で腸管の器質的異常のないことを確認し、さらに超音波、血液生化学検査、尿および検便などによって他疾患が否定されることが必要になります。  相談者の症状も八年前の産後から下痢が持続し、食欲不振、四肢冷感、睡眠障害などの自律神経失調症の症状があり、諸検査によって器質的疾患が除外されれば、過敏性腸症候群と診断ができるかと思われます。誘因としては、妊娠、分娩(ぶんべん)などの身体的要因や、環境の変化などのライフスタイルの乱れ、精神的ストレスとなるような出来事や悩みごとが関与している場合が多くあります。
 治療としては、下痢型、便秘型、交代性便通異常など、症状によって消化管運動機能調整剤や漢方製剤を使い分け、自律神経失調症状がみられる症例には、自律神経調整剤を併用します。心理的に不安や抑うつ状態がある場合は、抗不安薬や抗うつ剤を投与することもあります。
 治療の目標は患者さんが訴える自覚症状を軽減し、患者さん自身が心身相関のメカニズムを自覚して、自ら症状をコントロールできるようになることです。日常生活では、暴飲暴食を避け、ストレスを発散できるようなスポーツ、レクリエーション、趣味を持つことをお勧めします


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