■琉球新報2001年8月18日付夕刊に掲載 

被害妄想が再発

問い  二十二歳の時に「精神分裂病」と診断され、三カ月入院しました。完治したかにみえましたが、再び「死ね」という幻聴や周囲が「死ね」と言っているような被害妄想があらわれはじめました。それは過去に起こった幻聴、被害妄想がトラウマとなってあらわれたものだと思います。再度、病院に通うといってもそれほどの重病でもなく、薬で治るのかという不安もあります。解決策はあるのでしょうか。

 (23歳・男性)  

<答えるドクター>
小渡敬(沖縄県医師会) ・・・・・・・・・・・・・・・・

専門医の再診を/外来、短期入院で治療可能
答え
 相談者は、精神分裂病と診断され、入院治療により完治したと思っていたため、再び症状が現れたことで戸惑っているように思います。まず、精神分裂病の予後(発病後の経過)について少し説明したいと思います。
 相談者が経験した「突然、隣の部屋から女性の声が聞こえ、それが自分に対することを話しており、自分は監視されていると感じた」というような幻聴や妄想等の急性期の症状を急性病相と言います。精神分裂病の長期予後については、(1)このような激しい急性病相が一回ないし数回出現した後に治癒(ちゆ)するケースもあると言われています。しかし全体的には(2)急性の病相を繰り返しつつ慢性の経過をたどるのが一般的です。それ以外に、(3)ある時期から物事に無関心となり、意欲が低下し引きこもる等、病状がじわじわと進行する慢性的な経過をたどる場合も多く見られます。本来、精神分裂病という病気はさまざまな経過をたどる慢性疾患であります。
 病状再発の機序(きっかけ)については、もう治ったと思い込み服薬を中断することが関係しています。
 現在の精神分裂病の薬物療法は、高血圧症に対する薬物療法と同様、病気に対する根治的な治療ではなく症状等の消退を図る対症療法であるため、安易に服薬を中断することが再発の要因となります。そのため薬をやめる時は専門医と相談しながら慎重に行った方が良いと思います。その他、病状の再発には心理的なストレスや環境的な変化、あるいは生活リズムの乱れ等いろいろな要因が関係しています。
 相談者は以前に入院治療を行い良くなったことで治療を中断したために、症状が再発したものと思われます。病院に行くかどうかを迷っているようですが、このまま症状が治まらない場合もあるので、再度、専門医を受診し相談した方が良いと思います。
 最後に、精神分裂病はそううつ病とならぶ二大内因性精神病の一つで、発生頻度の高さや病状の特異性、治療上の困難さ等から精神医学の臨床において、今日もなお最も重要な位置を占めている病気です。最近の神経化学や精神薬理学の進歩によって、その治療は以前に比べ格段に進歩しており、たとえ発病しても外来治療や短期間の入院による治療が行えるようになってきました。日本精神病院協会の最近の調査でも、入院患者の80%以上が一年以内に退院しています。しかし、この病気に対する理解が薄く、いまだ社会的偏見が根強くあるため、これも治療の妨げになっているのが現状であります。


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