■琉球新報2001年8月4日付夕刊に掲載 

高音が聞こえない

問い  十年ほど前から耳が聞こえにくいと思っていました。実際に電子体温計の音が聞こえない、目覚まし時計の音が聞こえない、人の話が聞き取りにくいなどコミュニケーションがはかりにくく、困っています。昨年七月、耳鼻科を受診し、高音が聞こえていない事を知りました。難聴の病気のこと、補聴器を使用した方がいいのかアドバイスをお願いします。

 (29歳・女性) 

<答えるドクター>
野田寛(沖縄県医師会) ・・・・・・・・・・・・・・・・

正確な検査を/人工内耳、補聴器併用も
答え
 高音がほとんど聞こえないと言われた由ですが、高音域はどのくらい残聴があるか、中音域、低音域の聴力はどうなっているのか正確な聴力像を知る必要があります。
 原因に関しては、身内に難聴の疑いのある人はない由、しかしヘッドホンステレオなど聴く機会が多かった由、個人差がありますが、八十デシベル以上の音を連続して聴いていますと、騒音障害を生じることがあります。一般に騒音性難聴と呼ばれ、ヘッドホンによるヘッドホン難聴(その他ディスコ難聴、カラオケ難聴などその原因と思われるものがある時に呼ばれる)もその一つで、当初高音域の四〇〇〇ヘルツを中心に聴力低下を生じることが多く、さらに当初正常聴だった八〇〇〇ヘルツ領域にもおよび、高音域全体におよんでいきますので、これによるものかもしれません。
 人の耳には約一万個ぐらいの音を受け取る細胞があり、その細胞はどの高さの音を受け取るか決まっていて、ちょうどピアノのけん盤のように並んでいますが、騒音により高音域の細胞が障害を受けたのではと考えられます。そして、この障害を受けた細胞は再生しませんので、治療は不可と言うことになります。従って、予防が重要で騒音職場などは耳栓装着が義務付けられています。
 人の言葉を理解するのに、五〇〇〜四〇〇〇ヘルツ領域の音が必要ですが、特に言葉の聴き分けには四〇〇〇ヘルツ前後の高音域の音が必要です。従って、補聴器でこれがとらえるほどに聴こえが残っているのか、もし残っていれば低音域はどうなのか、高音域と低音域の聴力差が大きいほど、補聴器の場合、調整は難しくなり、種々の工夫が必要となります。
 高音域に全く聴力がない時には、低音域の聴力がどの程度かによりますが、欧米先進国ですでに始まっているように、人工内耳と補聴器の併用も考えられます。人工内耳の電極は、内耳の高音域の音を受け取る細胞のある部分に設置されますので、高音域を人工内耳でカバーして、低音域は補聴器でカバーするようにするのです。
 この相談者の方にはすぐ当てはまらないとは思いますが、このようなことができる時代になって来ていることも知っておいてほしいと思います。また、補聴器使用により聴こえが悪くなるのではと心配されていますが、不適合補聴器による騒音障害以外、聴こえが悪くなることはありません。むしろ聴こえないままでいると、聴き方を忘れていくのか、補聴器をつけても言葉の理解がうまくいかない方もあります。難聴は放置しておかない方が良いと思われます。
 まず正しい診断を受け、補聴について的確な対応ができる医療機関に相談された方がいいと思います。


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