■琉球新報2001年5月19日付夕刊に掲載 

妊娠していないのに白い分泌物

問い  二年前から妊娠もしていないのに、乳頭から白い分泌物が出る。友人も経験あるというので気に していなかったが、昨年十月から基礎体温を測り、市販の排卵検査薬を使ったが、妊娠しない。先 日不妊治療に関する本で私のような症状の場合、妊娠できないと書かれていた。病院でみてもらっ たほうがいいのだろうか。

 (27歳・女性) 

<答えるドクター>
神山 茂(沖縄県医師会) ・・・・・・・・・・・・・・・・

高プロラクチン血症の可能性も/不妊期間一年以上だと検査を
答え
 ヒポクラテスの時代から、乳頭から白い分泌物(乳汁漏出=ろうしゅつ)を認める女性は子宝に恵 まれないと指摘されており、乳汁漏出と不妊症の関連は古くから知られていたようです。
 乳汁漏出は、プロラクチンというホルモンの働きによるものです。このホルモンは乳腺刺激ホルモ ンと呼ばれており、通常、お産後に分泌が増加され、乳汁の分泌を促進します。妊娠していない時 にはこのプロラクチンの血中濃度は低いのですが、何らかの原因で異常に高くなることがあり、(高 プロラクチン血症)、本症の約九〇%に乳汁漏出が起こるとされています。よって、相談者は高プロ ラクチン血症である可能性が高いと思われます。
 高プロラクチン血症の原因は、下垂体腫瘍(しゅよう)や常用内服薬(精神安定剤や胃炎に対す る薬剤など)である場合もありますが、原因不明(血中プロラクチン濃度が高い以外に異常所見が ない)であることも珍しくありません。
 高プロラクチン血症への対応は、症状が乳汁漏出のみで、その量が本人にとって不都合でない 程度であれば放置しておいてもかまわないと思われます。しかし、本症は不妊症の原因となること もありますので、妊娠を希望している女性で生理が不順である、あるいは不妊期間が一年以上あ る場合には産婦人科で検査を受けることを勧めます。
 また本症の原因の一つに脳下垂体腫瘍があり、乳汁漏出に視野狭窄(きょうさく)を伴う場合、あ るいはプロラクチン濃度が非常に高い場合は脳神経外科的な検査も必要となります。
 高プロラクチン血症が不妊症の原因となる場合でも、その程度はさまざまです。重度な場合は無 月経となりますし、軽度であれば月経周期はほぼ整調で基礎体温でみても高温期がやや短めであ る(黄体機能不全)だけのことがあります。妊娠を希望する女性が高プロラクチン血症である場合 には、このホルモンを低下させるための内服薬(ブロモクリプチンあるいはテルグリド)が必要となり ます。しかし、不妊症の原因は必ずしも高プロラクチン血症だけではありませんので、プロラクチン を低下させても妊娠が成立しないこともあり、この場合は排卵誘発剤の併用投与なども考慮しま す。
 乳汁漏出があっても、不妊症ではないこともありますので、相談者は月経が整調で基礎体温の高 温期が十三から十四日間であれば、一年間は自然に妊娠するか否かを様子をみていてよいと思 われます。月経が不順である、あるいは整調であっても高温期が短いのであれば産婦人科での検 査を受けられた方がよいと思われます。


<健康相談室>メニューヘ