■琉球新報2001年4月28日付夕刊に掲載 

膝にたまる水の治療法は

問い  六十四歳の時に左膝(ひざ)関節炎と診断された。七十歳の時にひざに水がたまるようになり、治 療で水を抜いたが、足の痛みは残った。昨年右膝にも発病し、水を抜いて治療している。友人から 水を止めるための注射があり、整形外科でその方法をとっていると聞いたが、効果はあるのか。か かりつけの医者は最後の手段と言う。注射による治療法がいいのか、または水がたまらないような 薬はあるのか。

 (76歳・男性) 

<答えるドクター>
上里智美(沖縄県医師会) ・・・・・・・・・・・・・・・・

変形性関節症の可能性/注射は合併症の心配も
答え
 膝に水がたまる状態を医学用語で言いますと関節水腫(しゅ)と言います。関節には主に潤滑材 としての役割を務める関節液という液体があり、これは関節を覆う袋の内面についている滑膜(か つまく)という組織で産生されます。その量は人間の体の中でも最大の関節である膝関節において も一〜三_gという少なさです。
 関節水腫は関節液が正常範囲を超えて大量に産生され関節内にたまることですが、それはさま ざまな原因で発生します。関節水腫の治療法は原因となった疾患を治療するということになります。
 質問者の年齢になりますと変形性関節症という疾患がもっとも一般的で、文面からみると質問者 も変形性膝関節症と思われますので、この疾患について説明いたします。
 関節は骨と骨の継ぎ目であり、骨の表面は軟骨という神経がなく痛みを感じない組織で覆われて います。この軟骨が年齢とともにすり減ってしまい最終的には骨が関節の表面に露出してしまうの が変形性関節症です。軟骨がすり減って薄くなった状態では、歩行などによる体重の刺激は骨に 過剰に伝わってしまい、神経が豊富な骨は痛みとして感じてしまうわけです。
 その際、人によっては前述の滑膜に炎症を伴い関節液を大量に産生してしまうわけです。この状 態だと関節を覆う袋(神経の豊富な組織)は膨張してしまい、それが袋の神経を刺激して別の痛み を引き起こしてしまいます。この関節水腫は必ずしも疾患の重症度に比例するわけではありませ ん。ですから比較的軽症の人に発生して、まったく軟骨のなくなった重症の人に発生しないというこ とも生じてしまうわけです。治療法としては消炎鎮痛剤(痛み止め)の内服により炎症を抑える、大 腿(だいたい)四頭筋(太ももの筋肉)の訓練により関節を安定させる、関節内注射により直接滑膜 の炎症を抑えるなどがあり、それでも続く場合は手術的に滑膜を切除することもあります。
 関節内注射はステロイド系消炎剤とヒアルロン酸の二種類ありまして、前者が著しい効果がある ことが分かっています。ただステロイド系の消炎剤は骨を弱くするなどの合併症が比較的多く発生 するので現在の整形外科では以前ほど頻繁に使われなくなっております。主治医が言われた、注 射は最後の手段というのはそういうことだと思われます。残念なことに、この滑膜炎がなぜ起こる か、どうすれば治まるかは現時点では正確に解明されておりません(したがって関節水腫に著しい 効果のある内服薬も今のところありません)。主治医と相談し、原因と思われる点を根気よく一つ一 つ改善していくことが必要と思われます。


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