■琉球新報2000年11月18日付夕刊に掲載 

つわりがひどい

問い  十六歳を頭に四人の子がいるが、毎回つわりがひどく、妊娠期間中ずっと入院生活を送った。特に 下二人のときは症状が重く血を吐き、だ液の量も多く、出産後数日間もティッシュが手放せなかった。 産婦人科の先生は「消化器系に問題があるのでは」ともおっしゃっていたが、妊娠中毒症の一種なの でしょうか。次回の妊娠のためにも、原因を突き止めたい。どの診療科を受診したらいいでしょうか。

 (35歳・主婦) 

<答えるドクター>
仲地廣順(県医師会) ・・・・・・・・・・・・・・・・

悪阻は病的状態/妊娠早期より治療を
答え
 つわりは、妊婦の五〇−八〇%に出現し、妊娠五―六週ごろから悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、食欲 不振やだ液分泌亢進、さらには嗜好(しこう)の変化などの消化器症状がみられ、妊娠十二−十六週 ごろには自然に消失します。しかしまれに、妊娠期間中続くこともあります。つわりの症状が悪化して母 体の栄養障害や代謝異常を引き起こし、放置すれば全身衰弱をきたすものを悪阻(おそ)と言います。 悪阻は妊婦の〇・一−〇・三五%にみられ、経産婦より初産婦に多いようですが、重症例はむしろ経 産婦にしばしばみられます。つわりは生理的なものと考えられるのに対し、悪阻は病的状態であり、積 極的な治療が必要です。
 さてあなたの場合、四回の妊娠ともずっと悪心、嘔吐が続き、第三回と第四回の妊娠では、だ液分泌 が亢進し吐血もみられたとのことですが、これらの症状が出産後に全く消失しているようでしたら悪阻 の反復例と考えてよいと思います。悪阻のうち、だ液分泌が異常に亢進するものを妊娠流涎(りゅうえ ん)と称し、あなたの症状もこれに相当します。以前、悪阻を早期妊娠中毒症と呼んだこともあります が、現在では妊娠中毒症の範疇(はんちゅう)に入れていません。
 悪阻の原因はいまだ不明で、妊娠中の内分泌変化や一過性の甲状腺機能亢進症、自律神経失調 症などが誘因となり発症・増悪すると考えられる一方で、妊婦の性格、心理的ストレス、嘔吐をきたす 疾患の合併などが誘発・増悪因子になるとも考えられます。悪阻に対しては、入院のうえ、嘔吐や飢餓 による脱水、ケトーシス、電解質異常の矯正、栄養補給などの適切な治療を行えば、通常妊娠十六週 以前に治癒します。しかし、悪阻の中には治療に難渋し遷延(せんえん)する例もみられます。このよう な症例では、悪心・嘔吐をきたす他科の疾患(胃・十二指腸などの消化器疾患、横隔膜ヘルニア、脳し ゅよう、肝疾患、糖尿病や尿毒症などの代謝異常)の合併も考慮する必要があります。
 あなたが次の妊娠を計画する前に、悪心・嘔吐をきたす疾患の有無、すなわち、消化器を専門とする 内科か外科を中心に脳外科などの検診を受け、合併症が見つかったら、その治療を優先させるべきで しょう。特に異常がなければ、悪阻の症状や経過を熟知している主治医とよく相談されて、新たな妊娠 の早期から悪阻の治療を開始されてはいかがでしょうか。悪阻の原因がいまだ解明されていないの で、反復する悪阻を完全に予防することは困難と思いますが、適切な治療により症状の悪化や遷延を 軽減させることは可能と考えます。


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