■琉球新報2000年8月26日付夕刊に掲載 

痙性斜頸

問い  十五年以上前から首が左に傾き、食事や文字を書くときなどに不便を感じています。整形外科を受 診した際、「ケイセイシャケイ」と診断され「治るのは難しい」とも言われました。薬で二、三年間は良くな るが、通院しないとまた悪くなるということの繰り返し。最近、緊張した時などに頭が左右に揺れる感じ の震えがあり、人前に出るのが怖い。「ケイセイシャケイ」はどんな病気で、治療するにはどんな病院の どの科を受診すれば良いのか教えてください。

 (36歳・男性) 

<答えるドクター>
石津宏(県医師会) ・・・・・・・・・・・・・・・・

頸部の緊張に起因/専門医による精密検査を
答え
 痙性斜頸(けいせいしゃけい)とは、頭部(あたま)をささえたり動かしたりする頸部(けいぶ・くび)の筋 肉の異常な緊張によって、頭部が左や右などの側方へ傾いたり、ねじれたりするものです。主に胸鎖 乳突筋(きょうさにゅうとつきん)や僧帽筋(そうぼうきん)とよばれる筋肉の異常な緊張によって起こり ますが、これには大きく分けて二つのものがあります。第一のものは頸部の筋肉そのものの異常や筋 肉内の血腫(けっしゅ、血のかたまり)が原因となっているものとか、筋肉を支配している神経に異常が あるものとか、あるいは頸椎(けいつい、くびの骨)の疾患や頸椎の隙間(すきま)を流れる椎骨動脈 (ついこつどうみゃく)という血管の異常、第11脳神経(副神経)の圧迫などが原因となって起こるもの など、いろいろなものがあります。また、頸部の問題だけでなく、脳炎や髄膜炎(ずいまくえん)の後遺 症や、脳腫瘍(のうしゅよう)、脳出血や脳梗塞(こうそく)、あるいは脳の変性疾患などのさまざまな脳 の病変で起こるものもあります。
 これらの頸部や脳の何らかの病変によって起こる斜頸(しゃけい、くびがまがったもの)は、「器質的 痙性斜頸(きしつてきけいせいしゃけい)」とよばれ、その原因に応じて整形外科や外科、脳神経外科、 神経内科などの領域で治療を受ける必要があります。
 これに対して、第二のものは心理的なストレスや不安、緊張が原因で、頸の筋肉が異常に緊張して、 斜頸(くびの傾き、まがり、ねじれ)が起こるものです。これは、「心因性痙性斜頸(しんいんせいけいせ いしゃけい)」とよばれ、心身症や身体表現性障害のカテゴリーに入るものです。心身症とは、心理的ス トレスとか不安や緊張によって、自律神経系や血管系に異常がおこり、その結果、斜頸を招くものです が、身体表現性障害とは、心理的な欲求不満や怒りや葛藤(かっとう)などの処理しきれない感情のし こりが、斜頸という身体の表現をとり、心の問題が身体症状に転換されたもので、ヒステリー反応の一 つです。
 これら心理的な要因で起こる「心因性斜頸」は、心療内科や精神科の領域で治療が行われます。不 安や緊張やストレスをとる自律訓練法、筋電図バイオフィードバック療法、催眠・暗示療法、行動療法 などさまざまな心理・生理療法が試みられます。温泉療法によって治癒した症例の報告もあります。一 般的には不安や緊張を和らげる精神安定剤やhaloperidol(ハロペリドール)、trihexyphenidyl(トリ ヘキシフェニジール)、levodopa(レボドーパ)などの薬物療法が、カウンセリングとともに行われます。
 なかには、器質性と心因性の合併した痙性斜頸もありますので、専門医の精密な診断を受けるのが 肝要です。


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