■琉球新報2000年8月19日付夕刊に掲載 

強膜保護手術

問い  現在中三の息子は小二のころから視力が落ち始め、現在は右0・05、左0・06です。視力回復訓練 をしましたが効果がなく、小5のときには眼科で「眼軸が伸びている」と言われました。以来眼鏡とコンタ クトを併用しています。春の検診でまた視力が落ち、これ以上悪化しては心配です。強膜保護(SP)手 術で眼軸が伸びるのを止められるとのことですが、県内でもこの手術を受けられるのでしょうか。

 (42歳・女性) 

<答えるドクター>
知念靖(ちねん眼科) ・・・・・・・・・・・・・・・・

県内では実施せず/眼底検査後に相談を
答え
 始めに、手術の話の前に、物が見えるしくみを簡単に説明します。目に入ってきた光は角膜と水晶体 を通り屈折して、網膜に像が映し出されます。近視とは、屈折異常の一種で、遠方から入ってきた光が 網膜より手前で像を結び、物がぼやけて見える状態です。近視は屈折性近視と軸性近視の二つに分 類されます。
 屈折性近視とは、角膜、水晶体の屈折力が強すぎると遠くを見たときに網膜上でピントが合いませ ん。その中で毛様体の緊張で水晶体が厚くなり、近視の状態になった偽近視(仮性近視)は調節を麻 痺(まひ)させる点眼薬で治すことができます。一方、軸性近視は眼球そのものが前後方向に伸びてし まった状態で、網膜上でピントが合いません。たいていの近視はこの軸性近視です。
 さらに近視は単純近視と病的近視に分けられます。単純近視とは遺伝や環境などの関与により、小 学校高学年から中学校くらいで始まります。病気というより顔かたちがそれぞれ違うように、目のかた ちの個人差といえます。大方の近視はこの単純近視です。
 一方、ごく一部の近視は、幼児期の段階から始まり進行します。眼軸が異常に長くて近視の度数が 強すぎるため、眼鏡をかけてもあまりよく見えません。また、眼球そのものがかなり伸びているため、網 膜も引き伸ばされて非常に薄くなっていますので、眼を強く打ったりすると黄斑部(網膜の中心で視力 の最もよいところ)から出血したり、網膜自体がはがれてしまう網膜剥離(はくり)などを起こしてしまうこ ともあります。
 このような近視を病的近視と呼びます。その原因は不明で、遺伝が関係していると考えられていま す。
 質問にある強膜保護手術はこの軸性近視を外科的に食い止める方法で、正確には強膜補強術(po sterior scleral support operation)といいます。県内ではほとんど実施されていません。この手 術は眼球後方のさらなる拡張を防止し、可能であれば損傷した網膜、脈絡膜の修復を目的としていま す。
 すなわち眼球後極部(視力に大切な黄斑部など)を保護材料で保持します。保護材料としては保存強 膜、大■(だいたい)広筋膜などが使用されます。保護材料を移植する方法は三通りあり、X型移植、Y 型移植、シングルストリップ(Single Strip)移植法であります。
 しかしこの手術は眼球の後極部をある程度盲目的に手術するため、多少のリスクがありますので、 ある程度の眼底変化が始まってから手術するのがよいと最近では考えられています。病的近視のみを 手術しているのが実情ですので、よく主治医の先生と相談されて、眼底検査をしっかり受けてから手術 が必要かどうかを判断してください。


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