■琉球新報2000年7月22日付夕刊に掲載 

35年間も耳鳴りに悩む

問い  三十五年前、鉄工所で円筒形にした鉄板の中に入ってハンマーでひずみを直す作業を六時間ほどしました。その日から今日まで、耳鳴りがやみません。三十―五十デシベルくらいの音で、ジーとピーの中間音です。日常会話には支障はないのですが、最近電子体温計の音が聞こえなくなりました。二十年ほど前に一度だけ耳鼻科で診せたのですが、治療法はなく、耳鳴りと仲良くなるしかないと言われました。耳鳴りを治して、音のない静かな世界を取り戻す方法はないものでしょうか。

 (56歳・男性) 

<答えるドクター>
渡口明(沖縄県医師会) ・・・・・・・・・・・・・・・・

急性の音響性外傷/年に1度は耳鼻科受診を
答え
 ご質問の内容からしますと、強大音による聴力障害(難聴と耳鳴り)と思われます。この強大音による聴力障害は、専門的には音響性外傷と呼ばれ、急性と慢性に分かれます。急性では、瞬時に起こる狭義のもの(爆発音や鉄砲音など)と、やや比較的長時間の暴露後におこる広義のもの(ロックや演奏会、ディスコの後の難聴)に大別されます。慢性では別名、騒音性難聴ともいい、長期に強大音を暴露されることにより進行性の難聴を来します。
 強大音による聴力の障害度は、@音の強度A音の暴露時間B個人のもつ生来固有の音響に対する受傷性―などの相関関係によって決定されると考えられています。また強大音が聴力に及ぼす影響としては、一過性(自然に回復)のものと永久的な聴力障害とに分かれます。
 急性の音響性外傷の治療には、突発性難聴(突発的に起こる原因不明の難聴)に準じて行われます。すなわち、ステロイド治療・高気圧酸素療法・血液循環改善剤・星状神経節ブロックなどを、聴力障害の発症後できるだけ早期(二週間以内が望ましい)に行い、聴力の回復に期待します。
 聴力が改善されないと多くは耳鳴りが残ります。また、耳鳴りの治療にもいくつかの方法があります。例えば、原因の明らかな場合(中耳炎、メニエール病、聴神経腫瘍=しゅよう=など)は原因に対する治療となり、原因の分からない場合は対症療法(ビタミン剤・精神安定剤・血管拡張剤・代謝改善剤などの薬物療法が主体)になります。
 それ以外にも最近は新しい治療法として、局所麻酔剤にての鼓膜麻酔や注射療法・内耳麻酔(局所麻酔剤やステロイドを中耳腔に注入)・マスカー治療(雑音で耳鳴りを遮へい)・混合ガス療法などが試みられ、少しずつ効果が上げられてきていますが、なかなか決定的な治療法がないのが現状です。
 依頼者の聴力障害は急性の音響性外傷に当たります。三十五年間耳鳴りがやまないことにより、残念ながら回復の厳しい耳鳴り(聴力障害)と考えられます。耳鳴りは自己の心構えでコントロールできる状態のようですが、加齢など将来のことを考えて、年に一回もしくは聞こえや耳鳴りが気になるときには耳鼻科を受診されることをお勧めします。


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